国内外で高い人気を誇るドラマ’梨泰院クラス’。放送終了後も熱が冷めないほど盛り上がりを見せるものの、ドラマの舞台となった’イテウォン’の街は真逆で寒風にさらされているようだ。

国内でシンドロームを巻き起こし、海外でも爆発的な人気を誇ったドラマ’梨泰院クラス’。
韓国、ソウル近郊にある人気エリア’イテウォン’を舞台に繰り広げたストーリーとあって、撮影地である『イテウォン(梨泰院)』の街も盛り上がりを見せている‥かと思いきや、閑古鳥が鳴いているのが現状のようだ。

国内外にファンを持つ韓国ドラマ’梨泰院クラス'(画像出典:JTBC)

梨泰院で飲食業を成功させたパク・セロイ(パク・ソジュン扮)の話を扱ったドラマとあり、梨泰院の街の随所が撮影場所として使用された。
『恋のスケッチ ~応答せよ1988~』、『力の強い女ト・ボンスン』など、ドラマで実際に存在する街が舞台になった場合は撮影されたロケ地が注目を集めている。
これにより、ドラマの背景となったソウル龍山区梨泰院(ヨンサング・イテウォン)の商業エリアが再評価された。

だが、ドラマが見せてくれた甘い夜である’梨泰院’とは違い、現実の『イテウォン』は様子が少し異なっているようだ。その理由を探ってみた。

梨泰院の’いま’

韓国鑑定院の統計によると、2019年第4四半期の梨泰院・中大型商店街の空室率は26.4%で、ソウル主要商業エリア40ヶ所のうち最も高い空室率を記録した。
梨泰院商業エリアは賃貸料の上昇(ジェントリフィケーション)で2013年第3四半期を境に商店街の空室が増加。さらに、18年の龍山(ヨンサン)米軍部隊の移転で打撃を受け、そこに新型コロナウイルスの影響が加担し最悪の状況に直面している。

梨泰院のある公認仲介士(不動産業者)は、商業エリアについて「ようやくドアを開けただけで、取引が一つも行われていない」という顔をしかめている状況だ。ドラマ’梨泰院クラス’によって梨泰院の商業エリアが再び注目されているのではないかという質問に対しても「ドラマの影響は全くない」と答えている。

さらに、梨泰院の商業エリアだけでの問題ではないと指摘し「全国的に経済そのものが芳しくない現状の中、新型コロナウイルスの影響によりさらに厳しい時期」と主張している。

梨泰院の商業エリアは以前から良くない状況にあったが、米軍の移転や新型コロナウイルスの影響まで重なってしまい’最悪の状況’に陥っている。

実際、ハミルトンホテル周辺の大通りには空いている建物がいたるところに見られた。さらに、5階建ての建物が丸ごと空いているケースもあった。
また一部の店舗では、新型コロナウイルスの影響によりオープン時間の調整や臨時休業などに追い込まれている。

韓国でも有数の繁華街、梨泰院(画像出典:グーグルマップ)

しかし、別の公認仲介士は「マスコミが話しているほど最悪の状況ではない」という見解を示している。
氏は「空室率はソウルの主要商業エリアのうち最も高いというが、これは中大型商店街を基準にしたものだ」と指摘。また「大通りの大きな建物の空室率は高い方だが、梨泰院の世界料理通りや大通りでない路地に入ると、空室率はそこまで高くない」と述べた。

特に大通りの空いている建物については「賃貸人が敢えて賃貸料を取らずに建物を遊ばせてもいい人たち」とし「もちろん中大型建物が活性化してこそ商業エリアが回復する」と述べた。

盛り上げるカギは特性を生かすこと

一方で、新型コロナウイルスの影響で店舗経営が厳しいのは事実だが、その厳しい中でも人気を集める店舗は存在しており、それなりの専門性を持って経営する店舗には客が列を作って食事をしているという。

つまりは、雰囲気に流されて専門的ではないお店がオープンする事が問題とされているようだ。

フレンチャイズであっても梨泰院商業エリアでは特色を出さなければ生き残れない。実際、数々のファミリーレストランやフレンチャイズはオープンしたものの、結局は撤収している。

だが、海外のフランチャイズが韓国で一番先に支店を出す場所が梨泰院であり、梨泰院を起点に全国に拡大する場合が多いという。このような点から見て、梨泰院の商業エリアを活かすには、多様な国の食べ物や文化などが集合した特色を生かすことだろう。

トレンドに敏感な若者が集まる梨泰院だが‥(画像出典:グーグルマップ)

韓国大手通信キャリアの『ビックデータサービスプラットホームジオビジョン』統計を通じて、商店街情報研究所が梨泰院の商業エリアを分析した結果、20~30代が引き続き訪れ、特色ある店舗の月間売り上げが高いことが分かった。バー型酒場の月平均推定売上は1億ウォンに近いという。これは龍山区のバー型酒場の推定売上より約4000万ウォンも高い。

ドラマの効果よりは’春の陽気’効果

‘梨泰院クラス’に登場したシーンの多くが梨泰院で撮影された。
特に、パク・セロイが経営する『タンバム』やバク・セロイとチョ・イソが初めて会った場所などには写真を撮る人たちが相次いでいる。その中には外国人の姿も見られる。
ドラマが人気を集めればロケ地も同様に注目を集めることになる。そうなると自然と人は集まるものだ。

熱血青年パク・セロイの人気は街を活性化させるのか(画像出典:awseomeエンターテイメント公式INSTAGRAM)

しかし、ロケ地周辺の商業エリアの関係者らはドラマの影響を感じずにいると話していた。

『タンバム』を撮影した建物のすぐ隣に位置したコンビニ関係者は「ドラマが終わって写真を撮りに来る人々が増えたことは増えた」とし「しかし流動人口が増えたからといって売り上げにつながらない」と話した。続いて「ドラマの効果と言うよりは、暖かくなるにつれ、梨泰院全体で流動人口が増えたようだ」と話している。

『タンバム』撮影地の近くに位置するレストラン関係者は「2月よりも3月の売り上げが伸びており、週末には店舗のテーブルが満席になる」と話した。ドラマが売上に影響を及ぼしているかの質問には「影響が全くないわけではないが、春の訪れとともに、暖かくなるにつれ売り上げが上がったという感じの方が強い」とし「梨泰院の商業エリアの特性上、冬シーズンよりは春、夏シーズンの売り上げが高い」と話した。

これに続き、「ドラマが終わった後はたくさんの人が訪れるはずだった。しかし新型コロナウイルスの影響によって自粛ムードが高まり、外出自体を嫌がり、レストランで食事をすること自体もためらう雰囲気であったと思う」と、新型コロナウイルスの影響による残念さを吐露している。

また、他の撮影地周辺のカフェも同様に、昨今の状況による残念さを露にしている。
カフェ関係者は「ドラマの影響はほとんど受けていない。新型コロナウイルスでなかったら状況が違っていたはずだという残念な気持ちがある」とし「そのような中でも先月よりは売上が少し増えた」と話し、春の訪れによる良い兆しが見られてはいるようだ。
だが、「周辺の経営者に聞いてみても口を揃えて’厳しい’と話し、賃貸料を支払うのが大変だと泣き言を言う人が多い」とも話しており、まだまだ現状は厳しいよう。



新型コロナウイルスにより更なる打撃をうけた梨泰院の今後は?

本来ならば若者をはじめトレンドに敏感な人々が集まり、海外からの観光客でに賑わう活気溢れる人気スポット、梨泰院。

大ヒットドラマの恩恵に授かれるかと思いきや、前述したように新型コロナウイルスの影響で街全体が大きなダメージを受けてしまっている。

加えて、先ごろ大々的に報じられた、梨泰院のクラブで発生したクラスターによりさらに人々の足が遠のいてしまっているようだ。

ドラマのようにキラキラとした活気を取り戻すにはもう少し時間がかかりそうだ。

パク・ソジュン

韓国の人気俳優パク・ソジュン。本名はパク・ヨンギュ。1988年12月16日生まれ。

2011年、B.A.P出身バン・ヨングクの楽曲『I Remember』のMVでデビュー。
初出演ドラマは『ドリームハイ2』(2012)。

以降、ドラマ『魔女の恋愛』(2014)、『キルミーヒールミー』(2015)、『花郎<ファラン>』などに出演、”主演俳優”としての地位を固めた。

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