近年相次ぐ不祥事に芸能界やファンから行く末を心配されていたYGエンターテイメント。YGを創業したヤン・ヒョンソク氏が歩んできた道そしてYGの金字塔を打ち立て始めた’あの時’を振り返ってみた。
SMエンターテインメント、JYPと並んでいたK-POP3大事務所から一転’YG=薬局’と嘲笑され、この先が懸念されているYGエンターテイメント(以下、YG)。
所属アーティストの不祥事が相次ぎ、芸能界やファンから行く末を心配されていたYGが、絶体絶命の危機に遭遇したのは2019年に勃発した’バーニングサン事件’である。
‘バーニングサン事件’と関わりがあるとされている当時BIGBANG(ビッグバン)のメンバーだったV.I(スンリ)は、グループ脱退を余儀なくされた。’バーニングサン事件’が大々的に報じられた11日間、YGの株価は11%下落、消えた時価総額だけで1100億ウォンに上るという。
※YG=薬局:麻薬関連の不祥事が多いYGを皮肉ったあだ名。薬局(약국 ヤッグク)の頭文字をとるとYGになる。
‘未来のない’YG
泣きっ面に蜂の状況は続き、韓国国税庁はYG本社やYG元代表のヤン・ヒョンソク氏の自宅に対して特別税務調査を行うと発表。ヤン氏本人においては、所属芸能人に対する管理責任に加え、海外投資者への性接待(売春斡旋)や海外での常習賭博、不法外国為替取引手法の疑惑が持ち上がった。所属していた芸能人も再契約を望まずYGを去り、もはや’未来のない’芸能プロダクションに転落する羽目となった。
世界的な人気と知名度を誇るBIGBANGを輩出した会社、世界が熱狂するK-POPガールズグループ・BLACKPINKの所属会社..残念ながら、いつの間にか’情熱と努力’ではなく’富と名声’により黄金色に塗られていくYGの金字塔が、崩れ落ちている瞬間を今目撃している。
過去を記憶する一ファンとして残念な気持ちを抑えきれず、ヤン元代表を筆頭に皆が一丸となり、YGの金字塔を打ち立て始めた’あの時’を振り返ってみたいと思うようになった。
伝説の始まりは..貧しかった
アーティストとして大きな成功をおさめたヤン・ヒョンソクが、YGエンターテイメントを設立したのは1996年。
当時男性3人組グループKEEP SIXをデビューさせたものの、大コケ。彼らは当時韓国で流行っていた’New Jack Swingスタイル’のヒップホップグループで、楽曲は良かったものの、即席感が否めないという評価が付きまとった。
自信満々で世に送り出した’YG 1号’が大失敗に終わり、資金調達に苦しんだYGが出しだ切り札は、ヤン代表本人のアルバムリリースである。過去の’トップアーティスト’という名声がまだ冷め切っていなかったおかげで、ソロアルバムは22万枚を売り上げ、YGに起死回生のチャンスが訪れた。’ヒップホップ’と’ラップ’という、当時韓国では支持基盤が決して強くないジャンルで、ヤン氏は’第一人者’を目指すという確固たるビジョンを持って、潤った資金力で当時デビューしたジヌションや1TYME(ワンタイム)を徹底的に支援。そして彼の支援が実るまで、多くの時間はかからなかった。ジヌションや1TYMEが次々とヒットを飛ばしたのだ。
ヤン代表のデビュー曲『悪魔の煙』核戦争の危険性が潜んでいる世界への警告やメッセージ(動画出典:Youtube 제트)
ヒップホップグルーと音楽を楽しんでいたヤン君
2組アーティストの成功は更なる投資に繋がり、YGは多くのアーティストを迎え入れる。
ヤン代表は、本人も一員とした’YGファミリー’を1999年に結成。所属アーティストを’社員’ではなく、音楽を楽しむ’家族’とポスト定義したのだ。社長ではなく、アーティストたちの’アニキ’となり、ステージの上で汗を流すヤン代表。彼は本当にヒップホップクルーの一人として音楽とステージ、そして’家族’との時間を心から楽しんでいた。
‘YGファミリー’というブランドを通じて「やりたい音楽を仲間たちと楽しむ!」という風潮を作り上げたYGとヤン代表。当時これを近くで見ていた多くのK-POPミュージシャンやプロデューサーには、センセーショナルそのものだった。
この時のヤン代表の新鮮な試みは、大きな相乗効果を生み、やがてYG伝説の原点となる。SE7EN(セブン)、フィソン、GUMMY(コミ)、ビッグママが立て続けにヒットを飛ばし、2000年代に入ったYGは名実共にK-POPを代表する芸能プロダクションへと成長していた。
BIGBANGのリーダーG-DRAGONもYGファミリーの一員として活躍した(動画出典:Youtube MBCKpop)
富と名声が毒になったのか?
‘YGファミリー’の一員として、並外れた才能を披露していたG-DRAGONが、5人組アイドルグループ・BIGBANG(ビッグバン)のリーダーとしてデビュー。2007年にリリースした1stミニアルバム『Always』のタイトル曲『LIES(거짓말)』が、韓国国内にとどまらず、海外でも熱い声援を引き出す。その後『Last farewell』『HARU HARU』も大ヒット、当時始まっていた海外でのK-POPブームという追い風に乗り、あっという間にグローバルな人気アイドルグループとなった。
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女性アイドルグループにおいては、2009年にデビューした2NE1(トゥエニィワン)が、デビューアルバムからヒットを飛ばすなど’女子版BIGBANG’に相応しい活躍を見せる。YGにしては、BIGBANGに続けてBACK TO BACK(連続)ホームランを打ち放っていた。
K-POPの世界的なブームを牽引するポジションにまで成長したBIGBANGと2NE1は、YGに大きな富と名声をもたらす。KOSDAQ(コスダック / 1996年に設立された韓国の証券市場)の時価総額は1兆ウォンを超え、当時エンタメ界のトップだったSMエンターテイメントが追い付かれ、追い越されるのではないかと囁かれた。YGの金字塔が打ち立てられ、その立派な姿が披露される瞬間だった。
しかし、気の緩みが生じたのか、所属アーティストの創作の自由を保障するスタンスを取っていたYGの管理体制は裏目に出て、麻薬と性にまつわる不祥事が相次ぐという結果を招いてしまう。それだけでなく、エンターテイメントではない分野への事業拡大や捜査機関との癒着疑惑など、築き上げてきたものを自ら壊していく。それもあっという間に..。
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1999年に発表されたYGファミリーの『俺たちはYGファミリー』という曲にこのような歌詞が出る。
「白い粉への貪り(中略)死んでいく父親を見守っていた子供の目に映った馬鹿げた仕業、もうお終い! 次から次へと女を売って腹を満たした豚どもよ! 男という力の使い道を誤ったあなた..」
この曲を作詞したのは、ヤン元代表だ。
社会へのメッセージを、音楽を愛する仲間とともに吟じていたヤン元代表..訴えを社会ではなく、自分自身と愛する’家族’に向ける努力をしていたら、結果は変わっていたのだろうか。
1999年、YGファミリーの’一クルー’としてヒップホップ界の第一人者を目指していてヤン君。その情熱にあふれ夢を語る姿を再び見られるのか..’あの時’のマイクに声を乗せ、韓国歌謡界と世相を変えようとしたヤン・ヒョンソクとYGへリスペクトを込め、心より復活を祈る。
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