2022年は、隣国の韓国にとっては”大統領選挙イヤー”。周辺国との関係性において、その色が克明に分かれている2大候補。その支持者の戦いが、3年前の”サナ年号騒動”を蒸し返した。果たしてそのワケとは‥?

新しい1年が始まった。

2022年は、韓国で第20代大統領選挙(3月)が予定されており、政治や社会、外交など、大きな変化が予想される。

だからなのか、各候補の能力はもちろん、政治観やイデオロギーにまつわる議論が連日韓国ネットで巻き起こっている。

日米との同盟強化を国政の基調とする、野党(国民の力党)候補のユン・ソクリョル氏と、反日-親中の色が強い与党(共に民主党)候補のイ・ジェミョン氏の支持率は、追い越したり追い越されたりと、いわば”互角の戦い”が続いているため、両候補の支持者による議論は、日に日にヒートアップしている状態だ。

蒸し返された”サナ年号騒動”

特に、有名オンラインコミュニティーでは、史上最悪とも言われている”日韓関係”を招いた現政権への反発心を持つ、韓国の20~30代男性を中心に、イ・ジェミョン候補への批判スレッドが目立つ。

1月1日深夜、DCインサイドには「TWICE サナ 20代男性 VS 82年生まれの討論」というスレッドが立ち、2019年に勃発した”ある議論”を振り返った。

その議論とは、2019年4月にTWICE(トゥワイス)の日本人メンバーサナが、年号が”平成”から”令和”に変わったタイミングでその感想をSNSに綴った事が”問題”とされた、いわば”サナ年号騒動”である。

TWICE 日本人メンバー、サナ

TWICE 日本人メンバー、サナ(画像出典:TWICE 公式SNS)

当時「日本人にとっては意義深い出来事であり、日本人の彼女が感想を綴るのは当たり前のこと」とサナを擁護する声と、「(TWICEの)公式SNSに歴史・外交問題で揉めている日本の行事を祝う行為は軽率だ」と批判する声が対立。

同スレッドには、韓国のテレビ局であるJTBCの『時事トーク 世代共感』という時事番組で、サナを擁護する20代男性と、批判側に立った30代男性や50代女性が出演し、熱い議論を繰り広げていた模様を取り上げている。

まず、サナを擁護していた男性は「日本人が日本の大きな節目に個人的な感想を綴るのは、ごく当たり前な行動ではないか」と意見を述べた。

すると、批判側の2人は「彼女は韓国で活躍しているアイドル。多くの韓国人の対日感情を考慮せず、なぜこちらが日本人に配慮しないといけないのか」と反論。これに対し20代男性は「仮に中国で活動するBTSが、6月6日の*顯忠日に”自由民主主義を守護した先祖に感謝する”とSNSに綴ったとする。もし、中国人がそれに反発してBTSを罵倒したら、韓国人として不快な気分になるのでは?」と、再び意見を打ち返した。

*顯忠日:韓国の殉国者と戦没将兵を追悼する記念日。日付は6月6日(出典:ウィキペディア)。

両者の平行線を辿る主張は、ネット上へと燃え移り「サナが”天皇万歳”とでも叫んだか? 年号の意義も知らない連中どもが」「愛国心を盾に、1人の日本人アイドルを袋叩きして面白い?」「韓国で活動しながら、SNSで天皇即位を祝うなんて、呆れたわ」と延長戦へと突入。

この騒ぎのあった同年5月、音楽番組に出演するため韓国メディアの前に現れたサナが、うつむきながら涙を見せるなどして、ファンを悲しませた。

TWICE サナ

KBS『ミュージックバンク』に出演するため、韓国メディアの前に現れたサナ(写真提供:©スポーツ韓国)

うつむきながら涙を見せるサナ

うつむきながら涙を見せるサナ(画像出典:Youtube スクリーンショット)

(関連記事)サナ SNS「年号」炎上に対する心境を涙ながら告白.. 韓国内では擁護の声も

サナの騒動が蒸し返されたワケ

ではなぜ、新年早々韓国ネットで”サナ年号騒動”が蒸し返されたのか?

その理由は、上述した大統領選候補に深く関わっている。

前出の番組『時事トーク 世代共感』で、サナを批判していた当時30代の男性。彼は現在、イ・ジェミョン候補の選挙対策委員会で、主要ポストを担っている現国会議員(もちろん、与党所属)だ。

彼の経歴を見てみると、Youtube(ユーチューブ)をはじめとするSNSを利用して日本製品の不買運動を煽るなど、様々な”反日イシュー”に取り組んできたことがわかる。そんな彼を、選対委の要職として居座らせたイ・ジェミョン候補の政治観に対して、一部の韓国ネットユーザーが不満をぶつけるために、”サナ年号騒動”を蒸し返していると見られる。

もちろん、同スレッドにも賛否は巻き起こった。

しかし2019年のような、アイドル個人を擁護もしくは批判するレベルではない。あと2カ月後に迫っている大統領選挙への関心が反映された”時事問題”であり、コメント欄には、不支持候補の”偏狭な政治観”を叩き合う場になってしまった。

TWICEのメンバーとして異国の地で活動する中、故郷の節目を祝い、短く感想を残したサナ‥。どうやら彼女の純粋な行動は、次期大統領選の有力候補の支持者には、時間が経っても変わることのない”罪”のままであるようだ。




TWICE

TWICE (トゥワイス / ハングル 트와이스)は、2015年に韓国の音楽専門チャンネルMnetで放送されたサバイバルオーディション番組「SIXTEEN」を通して選ばれた9人のメンバーによって結成された。
グループ名の「TWICE(トゥワイス)」には、「良い音楽で一度、素敵なパフォーマンスでもう一度感動をプレゼントする」という意味が込められている。

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