Kカルチャーという新たな文化が入って以来、ここ日本でもその議論が広まりつつある“ファンの無許可撮影”。日本のエンタメ文化は、“ライブ”の意をそのままに、アーティストを前に、その時間を楽しむことにのみ特化して来た。しかし現在、その秩序が崩れつつあり、またそれを秩序と呼ぶか否かについても、難しい問題となっている。

新型コロナウイルスは一向に収束を見せないが、世界は少しずつ日常を取り戻そうとしている。

SUPER JUNIORはファンミーティング、TWICEは東京ドームコンサートを開催

SUPER JUNIORはファンミーティングを、TWICEは東京ドームコンサートをそれぞれ開催した。(画像出典:SUPER JUNIOR 公式Facebook、TWICE 公式Instagram)

3月、日本ではまん延防止等重点措置の解除が次々に発表され、対面イベントが増え始めた。

またSUPER JUNIOR(スーパージュニア)の日本ファンミーティングを筆頭に、メジャー級K-POPアイドルの来日公演が続々と決定。TWICEは、東京ドーム3デイズ公演を大成功に収めたばかりだ。

そんな中、韓国の大手オンラインコミュニティーでは、ある議論が交わされている。

これはすでに韓国だけの問題ではなく、日本のK-POPファンにも関わって来る問題だろう。

コロナ禍に韓国国会で突如浮上した“密録根絶法”議案

2020年、コロナ禍真っ只中。

韓国で、ある議員が”密録根絶法”を提案した。

これは創作者の権利保護、コンテンツ産業の生態系を保護するためとし、コンサートや公演で著作権者の許可なしに、録音・録画・撮影を禁止するという内容、いわゆるチッケムを禁じるというものだ。

しかし今現在、可決はされていない状況だという。

チッケムとはハングルで“직캠”と書き、ファンが直接撮影したアーティスト写真や動画という意味であり、また密着動画もここに含まれる。

韓国では、チッケムする人を指して”マスター”という言葉も誕生し、その人たちは推しのいる場所をとことん追いかけ、彼・彼女たちを撮影し、SNSに投稿する。時としてプロ並みの機材を持っており、その腕前もまたプロ並みだったりする。

そして、この法案が提起されたのは1年も前でありながら、大手オンラインコミュニティーでは現在、この話題について賛否両論が繰り広げられている。おそらく様々な公演再開がきっかけなのだろう。

下記、一部だが賛成派、反対派の意見を紹介したい。

出典:theqoo

賛成派

まず賛成意見のおおまかな理由としては、やはり公式なコンテンツ化を望む声が多かった。

また、公演中に視野妨害などの揉め事に巻き込まれた経験のある人からは、ちゃんと公演を楽しみたいという思いがあるようだ。

「人の肩を使って、耳元でシャッター音がうるさくて本当にムカつくから法で取り締まってほしい」

「もし撮影したいなら、公演側はお金をもっと取って撮影可能な区域を別に売ってほしい」

「映画の密録は法律違反なのに、コンサートだけなんでこんなに寛大なのか理解できない」

「近くで撮影されると本当に観覧の邪魔!」

「チッケムは誰かの被害の上に成り立ってることを知るべき」

「チッケムは乱暴する子がほとんどだから腹が立つ」

「やめなよって指摘したら、“ファンは私の写真見て喜んでる”って開き直られた」

「肩に大砲(望遠レンズのこと)乗せられたことがあって‥さらに撮影する壁になれと言われて、後列の女性たちに背中を押されて本当に嫌だった。全面禁止にしてほしい」

「(アーティストにとって)いくらステージの上であっても、画像や動画に残してほしくない姿があるはずだよ」

「あまりにも一般化しすぎて、問題点が認識できてない感じ。法整備は必要だと思う」

反対派

やはり反対意見が圧倒的多数を占めている。

その大半の意見が「チッケムを見てファンになった」というものだった。

「アイドルにチッケムは本当に大事なもの!!!!!!」

「チッケムがなかったら、アイドルを好きになることなんてなかった」

「公式が満足のいく映像コンテンツを発売しないからでしょ?」

「愛情のない映像売られても買うわけないじゃんw」

「マスターを雇ってくれればいいのに」

「禁止って言うわりには旨味があるからちゃんと取り締まらない事務所(笑)」

「観覧を邪魔しないように、プレスゾーン作って販売すればいいんだよ」

「私は推し“だけ”を見たいからチッケムは絶対必要」

「チッケムの結果ファンが増えて収益上がるんだから問題なくない?」

「事務所がメンバー別のチッケム出してくれればファンも撮影しないのでは?」

「私の好きなアイドルグループはメジャーじゃないから、チッケムが本当に貴重」

「事務所が発売したコンテンツも買ってるよ! だからチッケムはチッケムで放っておいて」

***

実は日本でも、撮影禁止にまつわる法律はない。

しかし、主催者側の規約に入っていることが大半で、チケット購入条件には必ず“無断録画・録音・撮影をしない”という規約がある。

それを同意した人のみが、チケットを買えるという仕組みになっているので、たとえ法律に違反していなくても、規約違反にあたれば主催者が退出命令できるのだ。

また、これらの法整備にもおそらくエンターテインメントのジャンルにもよるだろう。

ミュージカルや舞台が上演される中、シャッター音が鳴り続ければそれは”邪魔な音”に他ならない。

そのため、舞台系はあらかじめ“プレスコール”や”ゲネプロ(本番さながらで行われるステージ)”にマスコミを招待し、きちんと撮影日を設けるのだ。

コンサートとなるとまた毛色が違うため、チッケム反対の声が大きいのかもしれないが‥。

著作・肖像を悪用されないための法整備は必要であると感じるが、この法案に関しては”エンタメ”と、十把一絡げで取り扱うのは非現実的だろうというのが、大方の見方のようだ。





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