- 韓国メディアが、韓流コンテンツの成長に貢献した「王国」が揺らいでいると報じた。
- 「王国」とはCJ ENMのことで、MnetやtvNといった人気チャンネルを運営している。
- しかし、どうやら最近は、視聴率低迷による業績不振、子会社での横領事件など、問題が続いているよう。
韓国メディアのハンギョレ(www.hani.co.kr)が、「韓国国内コンテンツ市場の発展に貢献したCJ ENMが最近揺れている」と報じている。
見出しには、『何をしてもこじれる、CJ ENM』とも書かれている。
CJ ENMは、韓国CJグループの子会社で、2018年に通販事業を展開するCJオーショッピングと、エンタメ事業を展開するCJ E&Mが合併して設立された。
前身会社の時代から、韓国の代表的な音楽専門チャンネル“Mnet”や、ドラマやバラエティーなどの番組コンテンツを放送するケーブルチャンネル“tvN”、映画専門のテレビチャンネル“OCN(オリオン シネマ ネットワーク)”などを通じて、K-POPや韓国ドラマの世界的な人気を牽引してきた、韓流コンテンツの「王国」的な存在である。
特にtvNといえば、2020年のコロナ禍以降、アジア人気に留まらず、世界中の視聴者に認知されるようになったチャンネルで、「韓ドラ王国」とも称される。
『応答せよ』シリーズ、『賢い医師』シリーズ、『ミセン-未生-(2014)』『トッケビ〜君がくれた愛しい日々〜(2016)』『愛の不時着(2019)』など、挙げればきりがないほど、数多くの話題作を世に輩出している。
そんな人気チャンネルを抱える、コンテンツ強国のCJ ENMが揺れているとは、一体何が起きているのだろうか?
ハンギョレによると、まず一つ目の問題は、tvNの視聴率低迷。記事の中では「視聴率もコンセプトも方向性も失い、コンテンツ競争力が落ちたのが一番大きな脅威要素」と伝えている。
現在放送中のtvNドラマ『有益な詐欺』と『生まれ変わってもよろしく』で見てみると、7月1日基準の平均視聴率は、それぞれ3.9%と4.9%。
VOD人気が高い韓国では、視聴率が1桁台であるドラマが大半とはいえ、残念ながらこの2作品はまだ“低空飛行中”と言えるだろう。
ハンギョレが、2020~2023年の4年間に放送された、CJ ENM(tvN+OCN)のドラマ約80作品の視聴率を調査したところ、その内の約53作が視聴率5%未満だったという。
成功の目安とされる視聴率10%以上は、この4年間で、『イルタ・スキャンダル〜恋は特訓コースで〜(邦題/2023)』、『シュルプ(2022)』、『私たちのブルース(2022)』、『海街チャチャチャ(2021)』、『賢い医師生活』のシーズン1&2、『ヴィンチェンツォ(2021)』、『哲仁王后~俺がクイーン!?~(邦題/2020)』の8作品のみだった。
大衆文化評論家のチョン・ドクヒョン氏は「新生チャンネル(ENA)で放送した『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌(2022)』は、1、2時間だけ待てばNetflixで配信されるのに、視聴者が*本番死守した。プラットフォームではなくコンテンツが面白ければ、変わった視聴形態を見せてくれる」と話す。
*本番死守(본방사수)‥本放送死守の略。テレビ番組をリアルタイムで視聴すること。
ENA(Netflix)『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』は、初回視聴率は0.9%だったが、第5話で9.1%まで跳ね上がり、最終回は17.5%と自己記録を更新、平均視聴率は10.9%を記録した。
CJ ENMチャンネルの一つ、OCNで放送された『悪霊狩猟団:カウンターズ(邦題/2020)』も初回視聴率は2.7%で始まり、口コミによって人気が広がり、最終回は11%を記録している。
しかし、CJ ENM内部では「企画の大胆さが消えた」「過去には新しい試みを支持する文化があったが、最近は成功法則に従う安全な選択をしている」という声が出ているという。
ハンギョレの記事では、CJ ENMの売り上げについても触れており、メディアプラットフォーム部門だけで、今年第1四半期の売上は2779億ウォンと16.6%減、営業損失503億ウォンに赤字転換するなど、状況は再びコストパフォーマンスを計算させる悪循環につながっていると伝えている。
また、2020年にCJ ENMから独立した、OTTプラットフォームTVING(ティービング)も赤字が続いているという。TVINGでは、CJ ENMが運営する「Mnet・tvN・OCN」などの番組が多数ラインナップされている。
当時CJ ENMは「2021年から今後5年間、TVINGがコンテンツ制作だけに5兆ウォンを投資し、2023年までにオリジナル100作品を制作する」という抱負を明らかにした。
しかし、昨年は営業赤字が1191億ウォンと、2020年の61億ウォン、2021年の762億ウォンより増え、今年第1四半期の純損失だけでも386億ウォンとなっている。
TVINGに作品を供給したことがある制作会社の関係者は「TVINGが、チャンネルアイデンティティーをまともに掴めずに流されたのが、業績悪化の理由と見られる」と話している。
そして、CJ ENMを揺らがせているもう一つの問題は、2016年に設立された制作会社スタジオドラゴンの業績不振。
今年、スタジオドラゴン制作で話題になった作品は、『イルタ・スキャンダル』と『ザ・グローリー』程度。しかも『ザ・グローリー』は、子会社のファエンダムピクチャーズが作り、TVINGではなく、Netflixオリジナルシリーズとして配信された。
ハンギョレによると、サムスン証券の見通しでは、スタジオドラゴンの第2四半期の売上高は1400億ウォン、営業利益は119億ウォンで、前年同期比それぞれ11.1%と56%下落すると予想された。スタジオドラゴンの株価も、2017年上場以降、最低価格に近づいているという。
さらに追い打ちをかけるように、最近、制作現場に関わる内部職員の横領事件が起き、コンテンツ部門の代表取締役が辞任している。
スタジオドラゴン側は「不正行為はコンテンツ制作に大きな影響を及ぼさない」と立場を示したが、ある制作会社の関係者は「スタジオドラゴンはCJ ENMの子会社なので、きちんと内部監査を受けてきたのに横領が起きたということは、内部の穴が大きいということを物語っている」と話す。
tvNやスタジオドラコンは、韓ドラファンに広く知られている存在。
韓流コンテンツの発展に貢献してきた「王国」が、視聴率低迷による業績不振、そしてモラル事件の発生で大きく揺らいでいる。
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