- 韓国ドラマは、ジャンルミックスものの制作に長けている。
- 複数の要素をすっきりとまとめつつも、それぞれの魅力を活用して面白みを増幅させる。
- 韓ドラの強みが活かされた、観る者のあらゆる感情を揺さぶる『誘拐の日』(ENA/2023)を紹介する。

『誘拐の日』(画像出典:ENA)
韓国ドラマは、ジャンルをミックスさせてうまく1つの作品に仕上げるのが得意。
例えば、レジェンドドラマ『椿の花咲く頃』(KBS/2019)は、ロマンチックコメディーにミステリー、スリラー、ヒーリング、ヒューマン要素まで盛り込まれていたにもかかわらず、全てを見事に活用しながら、取っ散らかることなく1つにまとめて視聴者をあっと言わせた。
『誘拐の日』(ENA/2023)も、そんな韓ドラの強みが活かされた作品の1つ。犯罪、スリラー、ヒューマン、ミステリー、ブラックコメディーを、足し算と引き算、掛け算で絶妙にバランスを保ちながら、観る者のあらゆる感情を揺さぶってくる。
一言で言えば、誘拐犯と誘拐された少女の物語。シンプルな題材だが、その魅力はきっとあなたの想像以上。まだご覧になっていない人のために、あらすじや評価、配信&放送情報を含め、味見程度に魅力を紹介する。
「誘拐の日」あらすじ
物語は、白血病の娘を持つ父親が元妻にそそのかされ治療費を工面するために、やむを得ずお金持ちの家の一人娘を誘拐することにして始まる物語だ。
誘拐の動機が切なく、一見暗く重い作品のように感じられるがご心配なく。良い意味で視聴者の期待を裏切ってくる。

『誘拐の日』(画像出典:ENA)
それは登場人物の設定からも一目瞭然。優しく間抜けで頼りない誘拐犯ミョンジュンを、コミカルからシリアスまで幅広い演技力を持つことで知られるユン・ゲサンが。国内最年少のメンサ会員であり、大人顔負けの判断力と洞察力を持つ、誘拐された11歳の生意気な少女ロヒを子役ユナが演じている。
凸凹コンビの奇妙な関係性と、そんな偽親子の逃亡劇、そしてその結末から目が離せない作品だ。
ほっこりと世にも奇妙な物語の共存
本作においてまず押さえておきたいのは、嫌がる女の子を無理やり拉致・監禁している話ではないということ。ミョンジュンは、ロヒが記憶喪失であるのを利用して彼女の父親のふりをするが、計画的なものではなくただの成り行き。
「お父さん?」と聞かれて、目の前に転がってきたちょうどいい答えを、ラッキーと言わんばかりに拾っただけ。なんとも間抜けでかつ都合主義な誘拐犯で、終始この調子。
そもそも犯行を実行にうつす時も、自分が運転する車の前に偶然飛び出してきて倒れたロヒを見て慌てふためく始末。好都合だと喜んでもよいものだが、保護に近い形で彼女を家に連れ帰った。

『誘拐の日』(画像出典:ENA)
そして始まった2人だけの生活。料理にケチをつけたり、事あるごとに理詰めで追い詰めたり、言い合いになっても一歩も引かないくせ者ロヒに、ミョンジュンはタジタジ。時には、前出の“お父さんエピソード”同様、11歳の発言に大の大人がちゃっかり乗っかることも。
加害者よりも被害者側の方が強いという、なんとも奇妙な力関係で物語が進んでいく。その光景はまるで、気の強い妻と思春期の娘が一緒になって父親を攻撃するかのような雰囲気。はたから見ると、クスっと笑ってしまうシーンが目白押しだ。
そのうちになんとなく足りないものを補っているかのような空気が漂いはじめ、信頼関係なるものが徐々に芽生えていく。口喧嘩は絶えないが、真の部分では互いを思いやりあっている姿にほっこりせずにはいられない。

『誘拐の日』(画像出典:ENA)
だが忘れてはいけないのは、誘拐している事実とその理由。口達者な女の子と優しい男の面白い掛け合いが本作の全てではない。微笑ましいシーンと同時進行で、ミョンジュンがロヒの両親にコンタクトをとろうとする。
ところが連絡がつかないどころか、娘を探している気配すらなく、ミステリーとスリラー要素がここで見え隠れし始め、世にも奇妙な物語にも似たような雰囲気に。
そして、不思議に思っていた矢先、なんとロヒの親が死体で発見されるという展開に。ミョンジュンにとっては最悪の事態。誘拐した意味もなければ、両親殺害の容疑者になる可能性も。ロヒもかわいそうでたまらない。
また、病に伏せる実の娘がどうなるのかも気になるところ。ロヒとの関係性が深まれば深まるほど、物語をどう着地させてくるのかも興味をそそる。
それに加え、ロヒは本当に記憶喪失なのかも気になるポイント。もしかしたら天才少女の敷いたレールの上で、ミョンジュンが踊らされているだけなのではないかという節もある。犯罪と貧困という社会的メッセージも感じずにはいられない。

『誘拐の日』(画像出典:ENA)
いずれも、作品内で明確に言及していないのに、それとなく視聴者に展開を予想させ、感情を刺激してくるのが本作のすごいところ。小説を読んでいるかのように、想像を掻き立てたてられ、観進めるにつれて観る者自らどんどん面白くしてしまう仕掛けが詰め込まれている。
評価・配信&放送情報
それを立証するかのように、本国での視聴率は放送回を追うごとにほぼ右肩上がりで推移。1.8%でスタートしたが、最終的には5.2%まで獲得して成功裏に最終話を迎えた。
映画やドラマのレビューサービスFilmarks(フィルマークス)では、星5つ中4.2個も獲得しており、Google評価では83%という悪くない数字。日本でも多くの韓ドラファンを満足させたよう。
2025年4月1日現在VODでは、Amazon Prime Videoで配信中。テレビでは、本日4月1日と4月14日に、TBSチャンネルでそれぞれスタートする。
気になった方は、偽親子の逃亡劇の結末をその目でご覧になってみてはいかがだろうか。
The Kidnapping Day(誘拐の日) | Official Trailer | Amazon Prime
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