日本でシム・ウンギョンの名が広く知られたのは今回がほぼ初めてのことだが、子役出身のシム・ウンギョンは25歳ながら芸歴16年目というベテラン俳優なのだ。そんな彼女の出演した作品を、一挙紹介する。
今月6日に行われた第43回日本アカデミー賞で、シム・ウンギョンが映画’新聞記者’で最優秀主演女優賞を受賞し、話題となった。外国人俳優がこの賞に選ばれたのは、日本アカデミー史上初のことであり、本賞の新たな歴史を塗り替えた瞬間となった。
またシム・ウンギョンは同作で毎日映画コンクール日本映画優秀賞・女優主演賞、エランドール賞特別賞、TAMA映画賞特別賞・最優秀新進女優賞、新藤兼人賞プロデューサー賞など、数多くの映画賞を手にして、’新聞記者’の再上映が続々と決定している。
シム・ウンギョン(ハングル 심은경)
1994年5月31日(25歳)
ドラマ ’張吉山(チャン・ギルサン/ハングル 장길산)’(2004)
まだあどけなさ残る10歳のシム・ウンギョン。しかし演技はすでに俳優らしい一面を見せている。
ドラマ ’ファン・ジニ’(2006)
16世紀朝鮮王朝時代に妓生として生き抜いた女性を描いた物語’ファン・ジニ(ハングル 황진이)’では、主人公ファン・ジニ(ハ・ジウォン)の幼少期を演じ、KBS’演技大賞青少年演技賞’を受賞。一躍人気子役となる。
映画 ’ヘンゼルとグレーテル’(2007)
深い森の中にひっそりと佇む古めかしい洋館。ここに潜む身の毛もよだつ秘密とは……。世界的に有名なグリム童話の一篇をモチーフに、韓国映画界最高峰のスタッフが描き出す幻想と恐怖の物語。この作品でシム・ウンギョンは森に誘い込む不思議な少女ヨンヒを演じている。かわいらしいのにどこか怖い……すでに雰囲気も作り上げている演技力に脱帽。
ドラマ ’ギョンスク、ギョンスクの父’(2009)
1950年代の現代史を時代背景とした波乱万丈な人生を過ごして来た父、母、そして息子と娘が織りなすハートフルなファミリードラマ。もともとは演劇作品だったものをドラマ化。遊び人を父に持ったおてんば娘を演じたシム・ウンギョンは、少女から少し大人になった姿で強気なチョ・ギョンスクを熱演した。
映画 ’不信地獄’(2009)
祈祷にはまった母と2人きりで暮らしている妹ソジンが突然消えたという知らせを受け、実家に戻ってきたヒジン。しかし担当刑事はただの家出として形式的な捜査しかしてくれない。そんなある日、屋上から飛び降り自殺をした女性が妹宛ての遺書を残していて……。ソジンを演じたシム・ウンギョンの神懸った演技が当時話題となったが、神に接するシーンの撮影中、気絶してしまったというエピソードにスタッフも驚きを隠せなかったとか。
映画 ’サニー 永遠の仲間たち’(2011)
口コミが拡がり、観客動員数740万人を記録した大ヒット映画。70~80年代のヒットナンバーで綴る青春回想物語。ウンギョンは25年前のナミを演じ、当時の甘酸っぱい青い春を謳歌する役になりきった。
映画 ’王になった男’(2012)
撮影当時、シム・ウンギョンはアメリカに留学中で、撮影のために帰国して臨んだ作品。
朝鮮時代の光海君8年(1616年)、毒殺の危機に陥った王の影武者として王のふりをすることになった賤民(最下層の階級の身分)ハソンが、王の代役になったことで繰り広げられるストーリーだ。ウンギョンが演じたサウォルは絶対君主である王に仕える毒見役の女官。自身の演技に疑問を持っていたが、後日イ・ビョンホンから絶賛され感謝と尊敬の気持ちをSNSに書いていた。
映画 ’怪しい彼女’(2014)
この作品で彼女の名前を知った人が多いのではないだろうか。主演を務めた’怪しい彼女’が観客動員数860万人を超える大ヒット。第50回百想芸術大賞最優秀主演女優賞をはじめ、多数の賞を受賞。本作品は日本を含む計8か国でリメイクされるという世界初の記録を打ち立てた。ひょんなことから70歳の老女が20歳の姿に若返り、新たな人生を走り抜ける……涙なしでは見られない1本だ。
ドラマ ’ のだめカンタービレ~ネイルもカンタービレ’(2014)
本作でのだめ(韓国名:ネイル)役を演じ、漫画原作者の二ノ宮知子氏から「シム・ウンギョンさんの心のこもった演技が素晴らしい」と絶賛されるも、自身は「辛かったし、演技的にも混乱していて、自分はどうすればいいのか判断もできない状態だった」と’怪しい彼女’から一転して演技議論に巻き込まれてしまうのだった。
映画 ’ウォーキング王’(2016)
初めて自主映画に出演。重度の乗り物酔いのため、往復4時間歩いて登校する女子高生マンボクが競歩と出会い、その魅力に目覚めていく物語。「マンボクの突拍子もないキャラクターが自身と似ていて楽しく演じることができた」と打ち明けている。
‘ザ・メイヤー 特別市民’(2017)
名優チェ・ミンシクが主演を務め、ソウル市長選挙を巡って繰り広げられるモラルなき戦いを描いたポリティカルサスペンス。未熟だけど情熱だけで政界に飛び込んだ怖いもの知らずの広報担当パク・ギョンに扮したことで「何かを見せなきゃという強迫観念を持っていましたが、自分がやりたい作品を見せることが、一番自分の真心を表すことだと思った」と演技に対する向き合い方の変化を感じた作品だという。
映画’操作された都市’(2018)
チ・チャンウクの映画初主演作で、濡れ衣を着せられたゲーマーの主人公が、オンラインゲームの仲間たちの協力を得て仕組まれた事件の真実を暴くサスペンスアクション。シム・ウンギョンは引きこもりの天才ハッカーヨウルを演じている。
映画’サイコキネシス -念力-‘(2018)
ある日突然超能力が使えるようになった男が、別離していた娘と街を守るために奔走するSFアクションコメディ。映画’新感染 ファイナル・エクスプレス’を手掛けたヨン・サンホが監督を務めている。映画ならではのありえない展開にふっと笑える作品。
映画’ブルーアワーにぶっ飛ばす'(2019)
CM界で活躍する箱田優子の第一回監督作作品。シム・ウンギョンは主人公砂田の’秘密の友達’清浦を天真爛漫に演じた。香港、 上海、ドイツ、台北と各国で大盛況を及ぼし、第22回上海国際映画祭 アジア新人部門では最優秀監督賞&優秀作品賞に輝いた。
今後、シム・ウンギョンは日韓のみならず、ともすると世界へ羽ばたいていく可能性を秘めている。彼女のたしかな演技をもっともっと間近で見てみたいと思う。
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