- 韓国時代劇を人気ジャンルにした立役者といえば、数多くの大ヒット史劇を生み出してきたMBCだ。
- しかし同居が誇る名作の中には、歴史と一部異なる事実が含まれるとして、批判されたドラマがある。
- 本国はもちろん日本でも絶大なる支持を得た作品が、指摘を受けた部分を紹介する。
韓国時代劇は本国、海外問わず固定ファンが存在し、長年愛され続けている。
人気ジャンルへと押し上げるのに大きく貢献したのが、韓国の地上波放送局MBCだ。近年は以前ほどの勢いはなくなっているものの、かつては”韓ドラ王国”という呼び声が高く、同局が輩出した史劇はほぼ百発百中。韓ドラ史に残る名作を数多く生み出してきた。
しかしその代表格である、『宮廷女官チャングムの誓い』(2003)、『トンイ』(2010)、『奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜』(2013)の一部内容に対し韓国では、歴史的事実と異なると物申す視聴者が。
「ドラマはドラマ」と割り切って楽しむ人がいる一方で、フィクションを事実であると勘違いするような描写は、誤った歴史を広げ兼ねないと懸念する声も。
MBCの実績において「三部作的存在」といえる素晴らしい功績を残したこの女性時代劇3作。一体どの部分が一部から指摘を受け玉に瑕となってしまったのか紹介する。
宮廷女官チャングムの誓い
『宮廷女官チャングムの誓い』は、低い身分だった主人公チャングムが宮廷料理人となり、最終的には王の主治医になるまでの波乱万丈な物語が視聴者の心を打った作品。
前半は、王や王族などに食事を作る水刺間(スラッカン)に属するチャングムが、幾度とない料理対決を経て最高尚宮となる過程が大きな見どころの1つとなっていたが、実は朝鮮王朝では、王室の食事は今で言う料理長に相当する肩書を持つ男性が作っており、女性がその座に就いたことは一度もなかったのだとか。
またセリフの中で”段取り(단도리)”というワードが乱発されるが、これは日本統治時代に日本語教育が行われたことにより、そのまま韓国でも使用されるようになった外来語なのだが、朝鮮時代を背景にした本作に何度も登場するとして指摘を受けた。
トンイ
『トンイ』は、最下層の身分であったヒロインのトンイが、数々の試練を乗り越え健気に生きる姿に思わずエールを送りたくなる作品。
トンイは、秘密結社である剣契(コムゲ)を率いていたのにはじまり、宮内の行事で音楽や舞踊を担当する掌楽院(チャンアゴン)を経て、宮内の警察のような部署であった監察府(カムチャルブ)に属するキャラクターとして描かれていた。
しかし彼女のモチーフとなった淑嬪崔(スクビンチェ)氏は、イニョン王妃の服などを縫製する針房(チムバン)に所属する女官だったのだとか。
また、宮廷内の権力争いはトンイのサクセスストーリーを描くための道具にすぎず、その背景には全く触れていないと苦言をもらす声も。
それに加え、当時身分の高い女性は髪の毛を結ったカツラであるカチェをつけていたが、本作を手掛けたイ・ビョンフン監督が、重さがあるため女優の負担になるとして使用しなかった点まで、歴史歪曲にあたる水準だとの見解を示す人もいた。
奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜
“鉄の女”と言われる奇皇后をモチーフにした『奇皇后 〜ふたつの愛 涙の誓い〜』。元に貢女として連行された高麗人女性スンニャンが、異国の地である元で皇后にまで上り詰めた波乱万丈な生涯を描いている。
彼女が自らの手で自分の歩む道を切り開いていく様が一番の見せ場だが、それとは別に高麗人としてのプライドを失うことなく、最後まで高麗の民のために奮闘する姿が美しい。事実彼女は、貢女の廃止や、高麗出身者を元の要職に起用したと言われている。
しかし一部の間では、ドラマで取り上げるような偉人ではないとの議論が巻き起こったことが。
なぜなら彼女には、自分を含め家族や親族など私利私欲を満たすために権力を使う一面があったから。国王も恐れるほどの力を持っていたとされており、高麗は二の次三の次だったようだ。
*****
本記事で紹介した歴史に関するエピソードは、あくまで韓国の一部歴史学者など有識者が唱えたもの。
定説とされていたものが、研究の進んだ結果、実は違っていたというケースは少なくない。よって前出の様々な意見も、数年後には変わっている可能性が無きにしもあらず。
いずれにせよ、嘘だらけや歪曲などと批判されがちな時代劇。自国の歴史に敏感な韓国では叩かれやすいジャンルだ。ファンタジー作品を謳っているにも関わらず、バッシングされたケースもあるほど。
定説とフィクションのバランスは、今後も時代劇についてまわる課題となりそうだ。
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