2020年下半期のドラマを華やかに飾ったSBS『ペントハウス』。現在の韓国に見られる社会問題を盛り込み、あまりにもリアルな描写から視聴者の心を掴んでいるようだ。同じく社会問題を含んだ映画『パラサイト 半地下の家族』とともに、描かれている格差社会を見ていこう。
テレビでのリアルタイム視聴以外にNetflixなどのOTT(通信コンテンツ)が普及され、選択肢が増えたことで視聴率が低迷している韓国ドラマ。このような状況の中でも大健闘を見せているのが、SBS『ペントハウス』だ。
放送スタート当初は10%に満たない数字であったが、放送回を重ねるごとに視聴率も右上がりとなり、12月8日に放送された第13話では全国22.1%、首都圏23.9%と驚異的な数字をはじき出している(ニルソンコリア視聴率基準)。
ここ最近のドラマ界ではなかなか超えることが出来なかった視聴率20%の壁。それを軽く飛び越えた『ペントハウス』の最大の魅力は、韓国が抱える社会問題を描いているところだろう。それも生々しく、そして醜いほどに。
韓国社会が垣間見えることで視聴者を掴んだ『ペントハウス』だが、これ以前、アカデミー賞で世界的な快挙を遂げたポン・ジュノ監督作品『パラサイト 半地下の家族』(以下、パラサイト)も同じく、社会問題となっている格差社会を描いている。作品のヒットとともに”韓国”という国自体への関心も高まり、日本をはじめ世界からも注目されている。
『ペントハウス』と『パラサイト』で共通して描かれている社会問題、その二つのキーワードは、”学歴”と”不動産”の格差だ。
前者については、日本でもニュースやワイドショーなどで取り沙汰されており、その過熱ぶりと過酷さは知れ渡っている。
親は子どもを良い学校に入れようと奮闘し、少しでも優秀な家庭教師をつけたり、合格率の高い塾へ通わせるなど、まるで『ペントハウス』が描くワンシーンのようにあらゆる手段をとっている。
貧困家庭では『パラサイト』のように、賢いものの希望大学に入れずにそのままの状態であったり、学歴というステイタスが言えず嘘で固めてしまい、優秀な大学生を装って裕福な家に家庭教師に入るなどしている。
いくら頭脳明晰であっても、たとえいい人であっても、学歴で判断されてしまうという何とも世知辛い世の中だ。
学歴と並んで人々が望むもの。それは”富”だ。
韓国で”富”の象徴として挙げられるのが”不動産”である。
『ペントハウス』では女の欲望とともに不動産の成功劇が描かれている。舞台となる経済的に裕福な人々が居住する江南の住商複合マンションは、高層階に行くほど高価とされている。上層だけを眺めながら上へと上がろうとする人間の果てしない欲望。富とステイタスを得るために必死になる姿がリアルで生々しい。
一方『パラサイト』では、ギテク一家の住む半地下住宅、パク社長の住む高台の大豪邸と、住宅が対照的に描かれ、ひと目で不動産格差があることが分かる。
韓国の不動産に対する意識は日本とは違い、”資産”と言うよりは”投資”としての意味合いの方が強い。なぜ”投資”となるのかと言うと、それは韓国の不動産事情が特殊なためだ。
例えば賃貸マンションを借りる場合、日本では敷金・礼金を支払い、家賃として月々の支払いが生じる。
一方、韓国では”チョンセ”なるシステムが一般的となっている。”チョンセ”とは韓国独特の住宅賃貸制度で、毎月の家賃の代わりに、契約期間分の保証金をまとめて預けるというもの。借主は毎月の家賃がいらない上に、契約期間が終了すれば保証金は全額返却されるのだ。
一見、借り主のみが得をするように見えるシステムだが、大家にもメリットは大きい。大家は預かった保証金を利率の良い金融商品に投資し、そこで得た利子を収入としている。つまり資金を運用して利益を上げているのだ。
また、韓国ではこれまでマンションを所有したら、それを担保にもう一軒マンションを購入することで、さらなる利益を得ることがポピュラーとなっている。
しかし現在、韓国の不動産はかつて日本で起きたバブル期を思わせるような上昇を見せている。その理由として挙げられるのが、上述した韓国の特殊な住宅事情と文政権下による20回を超える不動産政策だろう。
不動産が財テクの手段となっており、このことが不動産の高騰を引き起こしている要因のひとつ。
そして2つ目の要因となってしまった、政策。政府側は不動産格差を解消するべく、これまでに一定額を超えた住宅ローンの禁止や譲渡税の引き上げなど不動産政策を打ち出した。しかし功を奏するどころか逆の効果を生み出してしまい、その結果、不動産の高騰が生じてしまった。
不動産が高騰すればするほど庶民はますます手が出ず、富裕層だけの1人勝ちという構図が生まれ、格差が生じてしまうのだ。
お金を増やす手段、ステイタスを誇示する手段として『ペントハウス』や『パラサイト』で描かれている”学歴”と”不動産”。どちらも実際の韓国社会で問題視されていることだ。ドラマや映画だからフィクションなのでは‥と思われるが、上述したように生々しい程の現実がそこにある。
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