- 近年韓国ドラマは、スケールが大きく刺激的なストーリーの作品が増えつつある。
- そんな中、その流れに反し、お粥のようにホッとさせてくれる温かな物語wavveオリジナル『パク・ハギョンの旅行記』が韓国でひそかな話題に。
- 本記事では、同作のあらすじや見どころなど、昨今増加している作品にはない魅力を紹介する。
韓国ドラマはOTT界で、絶大なる支持を得ているコンテンツの1つだ。
それに伴い近年、ドラマ制作会社間の競争が過激化、よりスケールが大きくより刺激的なストーリーの作品が多数輩出されるように。中には、地上波やケーブル局では扱うことの難しい水準のものも。
映画を思わせるような壮大でセンセーショナルな物語のドラマが、OTT界を席巻している。
日本の韓ドラファンの中にも、韓国ドラマを見る醍醐味の1つにこれらを挙げる人は多いだろう。
しかしその一方で、あまりにもそこばかりを意識した作品が溢れすぎているのではないかという意見も。
OTTが普及しはじめた頃、視聴者の選択肢の幅が広がることが期待されたが、現在各サービスが扱うドラマは多様性に欠けているとも言える状況。
し烈な競争を勝ち抜くためとはいえ、見る者に受けのよい派手な作品ばかりがラインナップを飾っている現状に、一部からは残念な声が上がっている。
しかし制作会社サイドにも、そうせざるを得ない理由が。現在世に出るのを待っている作品はなんと80作にも及ぶと言われており、いくらプラットフォームが多様化したとはいえ配信枠に対してドラマ数が多すぎる状況。
こうなると、どうしても制作費をかけた規模の大きな物語から配信が決定することに。このため自ずと各社必死で競争に有利な作品を作ろうと奮闘するという構図が出来上ってしまう。
CGを駆使した構成や奇抜なストーリー展開など、韓国ドラマのクオリティーがアップするというメリットがある一方で、作品に偏りが生じはじめている。
そんな中この流れに反し、どこかホッとするまるでお粥のような心温まるドラマが韓国でひそかな話題に。
『ロマンスは別冊付録』(tvN/2019)以来、約4年ぶりにお茶の間復帰したイ・ナヨンが主演を務めるwavveオリジナル『パク・ハギョンの旅行記』だ。

wavveオリジナル『パク・ハギョンの旅行記』(画像出典:wavve)
本作は、土曜日の1日だけ旅行に行く、国語教師パク・ハギョンの予想できない瞬間と奇跡のような出会いを描いた明朗流浪記。
誰もが共感する感情、じっとしていたらおかしくなってしまいそう、もしくは思いどおりにならない日常から抜け出したいなど、そこから“去る”という理由を持った主人公が、足と心の赴くままに旅行に出かけていくストーリーだ。
耐えがたい現実から逃れるといった重い内容ではなく、少し気分を変えたいといった比較的ライトなテイストで描かれており、クスッと笑えるようなコミカルさも含まれている。
ソウルや済州(チェジュ)、釜山(プサン)、慶州(キョンジュ)などを背景に、毎話異なるエピソードで構成され、1話24~28分程度で通常のドラマの半分程度の長さ。

『パク・ハギョンの旅行記』のワンシーン(画像出典:wavve)
旅行先の美しい風景よりも、主人公の内面に焦点を当てた物語で、どちらかといえばパク・ハギョンのドキュメンタリーといった雰囲気。日常の延長のようなスタイルで派手さは全くなく、ゆっくりとした時間の流れが魅力だ。
例えば、お目当てのパンを探している女の子に偶然出くわし、その子が無事帰宅できるか何軒もお店をまわる間ずっと後をついていったり、現金もカードも家に忘れてきたにもかかわらずそのまま直進したりと、独特のゆるさが。パク・ハギョンの気の向くままにストーリーが繰り広げられていく。
そして、年齢は不明だがおそらく30代から40代前半と予想される彼女が、旅先で様々な人々と関わりそれをきっかけに自身を見つめ直す。

旅先で様々な人々と関わりそれをきっかけに自身を見つめ直すパク・ハギョン(画像出典:wavve)
ある時は、自分を必死で育ててくれた両親を思い出し、「私はまだ自分の人生を生きるだけでも大変・・。こうやって年をとっていいのかな」と自身に問いかける。
またある時は昔の教え子に会い、つい先日作曲家になりたいと言った生徒に対し自分が放った一言を振り返るシーンが。
パク・ハギョンの心の声を言葉にしたイ・ナヨンのナレーションとともに、見る者の心に響き共感を呼ぶ一作となっている。
コンピューターグラフィックや、圧倒的な制作費、奇抜なストーリーがなくても十分な満足感があり視聴者の心を掴み注目を集めはじめている本作。
現実離れした派手な作品は、一瞬で私たちを別世界に誘い高いエンターテインメント性で楽しませてくれるが、中には日常や自分自身をじっくりと振り返ることができるような、または癒しを与えてくれるようなお粥に似た温かさのあるドラマがあってもよいのかもしれない。
パク・ハギョンの旅行記
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