”才能寄付”で字幕翻訳者を募り、物議を醸した女優のキム・テリ(写真提供：ⓒ TOPSTAR NEWS)

女優のキム・テリがインスタグラムを更新し、その投稿内容が物議を醸している。

5月22日、キム・テリと所属事務所が運営するインスタグラムの公式アカウントに、ある募集事項が掲載された。

その内容は彼女のVlogシリーズであるYouTube(ユーチューブ)動画、『そこがどこか』の字幕翻訳者を募集したいというもの。

投稿には、動画をたくさんの国のファンが見ているとし、「みなさんの言語の字幕をつける方法がないか悩んだ結果、こんなアイディアが浮かびました。テリの字幕制作スピードがとても遅くて、”私がやればすぐできるのに？”と考えたり、直接翻訳に携わりたいと考える各国の隠れた実力者たちがもしかしていらっしゃるのでは？？」と書かれている。

彼女はその後、翻訳者募集を”才能寄付”で行うと明かし、投稿の末尾には「字幕が完成されたら、お望みの方に限り、メールまたはインスタグラムのIDを字幕の最後に掲載します」と付け加えた。

今回物議を醸したのは、”才能寄付”についてだ。”才能寄付”とは自身の才能を誰かのために寄付することであり、報酬がなくボランティアで行うことを意味する。

さらに投稿に添付された応募フォームには、言語の流暢さや可能な翻訳量に関するアンケートが記載されており、質問事項には「各エピソードの長さは約30〜40分です。翻訳するのに約4〜6時間かかります」と記された。

このことからもキム・テリは、時間と手間のかかる字幕翻訳作業を無償でファンにお願いしたとして、議論を巻き起こしているのだ。

キム・テリの人気Vlog『そこがどこか』(画像出典：MANAGEMENT MMM OFFICIAL YouTube キャプチャー)

インスタグラムのコメント欄には指摘の声が寄せられ、事務所側は投稿を削除。翌日の5月23日には所属事務所が公式SNSを更新し、謝罪のコメントを発表している。

事務所側は「『そこがどこか』のシリーズ動画は広告を含め、どの部分においても収益は発生していません」「多様な言語字幕翻訳について助けをお願いしたのは、多くの海外ファンの皆さんが、動画を楽しんでくださればという気持ちだけで始めたことでした」と釈明。

そして「この全ての過程に不快感を抱かれた方々に、改めて心からお詫び申し上げます」と伝えている。

この騒動がネット上で広がると、”才能寄付”と共に”情熱ペイ”という単語も注目を浴びた。

”情熱ペイ”とは雇用主が相手に経験を与える名目で、安い賃金で働かせることを指す言葉だ。報酬はあるものの、働きに見合った賃金を受け取ることはできず、日本では”やりがい搾取”と呼ばれている。

主に若者を搾取する行為に対して使われ、夢やキャリアのために経歴を積みたいと考える人々の気持ちを利用した、悪質な行為として捉えられている。

”才能寄付”や”情熱ペイ”はこれまで、夢を持つ多くのMZ世代の若者を泣かせ、憤りを与えてきた。

そんな”情熱ペイ”のエピソードは、韓国芸能界でも度々話題となっている。

求人募集で”情熱ペイ”と批判されたDavichiのカン・ミンギョン(画像出典：SBS 뉴스 YouTube キャプチャー)

今年1月には韓国の女性デュオ、DAVICHI(ダビチ)のカン・ミンギョンが、”情熱ペイ”の批判に包まれた。

彼女は自身が手がけるファッション企業の求人を掲載。業務内容はカスタマーサービスとデザイナーとし、雇用条件には”海外顧客に対応できる英語力”、”大卒以上”、”3〜7年の実務経験”を掲げている。

しかし、その人材に提示された年俸は2500万ウォン(約250万円)。

ネット上では待遇に対し、「この値段で雇えるわけがない。人の労働力をなんだと思ってるの？」「自分はたくさん稼いでるのに、社員には還元しないんだね」と厳しい声が寄せられた。

5月7日にはYouTubeチャンネル『Pixid』にて、俳優キム・ウビンが新人モデルと交流する動画が公開された。

そんな中、彼は後輩が語った”情熱ペイ”の経験について反応を見せている。

チャットを使いトークを交わす中、モデルの1人が報酬40万ウォン(約4万円)で、衣装80着の撮影をさせられたと告白。

するとキム・ウビンは眉間にしわを寄せ、「80着？どのブランド？放送で公開しよう。本当にひどい」と怒りを口にした。

過酷な経験をしたモデル本人は「ただやらなきゃ‥っていう気持ちだった」と打ち明けていることからも、どうやら芸能界では”情熱ペイ”があまり珍しいことではないようだ。

これらの問題はすぐに解決できるものではない。しかし、キム・テリの騒動をきっかけに、多くのネットユーザーが”才能寄付”と”情熱ペイ”に再注目し、議論を繰り広げている。

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