- KBSが、韓国時代劇“本家”という名声に傷がつく出来事が起きている。
- 発端となったのは、現在韓国で最も高い人気を誇る時代劇『高麗契丹戦争』。
- KBSに無条件の信頼を寄せていた韓国の視聴者からは不満の声が多く上がっている。
日本でも高い人気を誇る韓国ドラマのジャンルと言えば「時代劇」である。
隣国の歴史という、一見馴染みのない物語であるにもかかわらず、優れたストーリーとスケール、役者たちの演技力を最大限引き出す演出で、多くのファンを獲得している。
また、日本の大河ドラマのように史料に基づいたストーリーではなく、多少の想像力が加味された、いわば“フュージョン時代劇”が多いのも人気の秘訣と言われている。
しかし、1981年から約40年間、史料に基づいた大河ドラマ(韓国では、正統史劇ともいう)に固執してきたテレビ局もある。時代劇の本家と言われるKBS(韓国放送公社)なのだ。
MBCやSBSなどのテレビ局が“フュージョン時代劇”でアジア全域で巻き起こった韓流ブームに乗っかり、大成功を連発する時も、黙々と正統史劇を制作し「テレビで学ぶ韓国歴史」「親と子供が一緒に視聴するべきドラマ」と好評を博してきた。
そんなKBSだが最近、時代劇の本家という名声に傷がつく出来事が起きている。
発端となったのは、現在韓国で最も高い人気を誇る時代劇『高麗契丹戦争』。同作の原作者が、KBSに対して「第16話から、名君である顕宗(高麗第8代国王)を愚かなキャラクターに描いている。原作にもないし、史料にもないデタラメだ」と公に批判したのだ。
「高麗契丹戦争」どんなドラマ?
まず、『高麗契丹戦争』の時代背景を知っておこう。
物語は1010年の高麗。千秋太后(イ・ミニョン扮)によって追い出され、僧侶となったスン(キム・ドンジュン扮)が、朝廷に呼び戻され国王(顕宗)に即位。これを口実に契丹(4世紀頃から中国大陸に存在した国。現在は消滅)が高麗を侵攻するという、韓国歴史における大きな戦乱を描いたドラマだ。
韓国の史料には、3度にわたる侵攻に一時は避難を余儀なくされる顕宗だが、指導力を発揮し、契丹との戦争を勝利に導いた君主として記録されているという。
だが、『高麗契丹戦争』で描写されている顕宗の姿は、政治的な判断が不十分で、時々突発的な行動をする、いわば“愚かな若者”。これに対して今回、原作者が不満を示したと見られる。
歴史歪曲議論‥KBSの反応は?
では、KBS側の反応は?
1月23日、脚本を担当したイ・ジョンウ氏は「『高麗契丹戦争』は、原作を実写化を目的と制作されたドラマではない。原作を参考にし、“原作”として表記はしたものの、方向性がまったく違う」とコメント。原作とは違う、KBS独自の作品(ドラマ)という点を強調しているものの、原作者が指摘する「史料にはないデタラメ」という点については、反論はしていない。
むしろ「原作者は、ドラマの汚点が、自分の作品へ悪影響を及ぼすのではないかと、ドラマと距離を置いている」と、原作者の主張に別の思惑があるかのように疑心に満ちたコメントも登場した。
もちろん、時代劇だからと言って100%史料と合致しなければならないわけではない。視聴者を引き付けるため、ドラマ性を持たせる手段として多少のフィクションは必要なのかもしれない。
しかし、時代劇本家として、KBSに無条件の信頼を寄せていた韓国の視聴者からは不満の声が。それには、一部の韓国メディアも加勢している。
SNSや主要オンラインコミュニティーには「このドラマ、フュージョンだったの?がっかりした」「KBSも視聴率稼ぎのため歴史歪曲に走るとは‥」「(史料に基づいた)正統史劇と宣伝したのでは?」と、不満の声が多く上がっている。
KBSとしては、“正統史劇”、“時代劇本家”というブランドが持つ視聴者の期待と、それを裏切った時の恐ろしさを体得したと言わざるを得ない出来事なのだ。
『高麗契丹戦争』予告映像
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