<あらすじ>

2004年、ソウルの南大門市場でアルバイトをしていた頃のエピソードです。

バイト先は、南大門市場にあるMESA(メサ)というショッピングモールで、すぐ隣には新世界デパート明洞本店があり、常に多くの人々で賑わっていました。

当時、MESAの12階か13階には、音楽番組の収録できるステージホールのようなところがあって、度々人気歌手が訪れていました。

時は夏のある日。その日も、朝から制服姿の女子高生の群れがちらほら見えて「今日も誰か来るんだね･･」と思いながら、仕事の支度をしていたのです。

彼女たちが持っている応援パネルには、ハングルで「동(ドン)」という文字が･･。

「？ “동”という字が入る歌手は誰？」

そう思っていた私が、その正体をわかるようになったのは、その日午後15時頃でした。

女子高生たちがどこかに向かって猛ダッシュしていた･･

ショッピングモールの外に設置されていた食器売り場で手伝いをしていた私。

その時、驚くべき光景を目の当たりにします！なんと、大勢の女子高生たちが奇声を上げながら、ある車に向かって一斉に猛ダッシュをしていたのです(多分、収録のため現場に到着したアーティストの車)。

そこは、明洞と南大門市場の中間地点であるため、常に車や人で混雑していたので「おい、おい、あぶないよ！」と、声をかける大人たちもいました。

女子高生たちに猛攻にぼろぼろになりましたㅠㅠㅠ(イラスト：corin)

気になった私は、その正体を確認すべく、女子高生たちに名前を聞いてみることに。

「なんでこんなに騒いでいるの？ 誰なの？」

すると、優しい顔をしていた女子高生1人が、その正体を教えてくれました。

「ドンバンシンギ(동방신기)です。超有名なアイドルグループですよ」

「は？ドンバンシンギ？ 名前ダサくない？ 香港映画のタイトルかよ(笑) ニーハオ、ドンバンシンギ！」

私の冗談はさらにエスカレート･･

「トンパンシンギ(똥빵신기)はどう？腸内環境に良いアイドルみたいだね！ハハハ 」

※똥(トン)は”うんち”を、“빵(パン)”は“おなら(방구)”を意味する。

すると、聞いていた女子高生の優しい顔が急変！怒りを抑えきれなかったのか、罵声を上げながら猛攻を開始。さらに、周囲にいた数人の女子高生も加勢したのです。

「おっさん、私たちのオッパに失礼だぞ！」

「正直、羨ましいでしょう？ モテないから羨ましいでしょう？」

「ひどい！あんたみたいな人間が評価するような人たちじゃないよ！謝りなさい」

「こいつ正気なの？」

女子高生たちの猛攻にぼろぼろになった私。結局、その場を“猛ダッシュ”で逃げました(泣)。

確かに、数人の女子高生たちが怒りながら私の後ろを追いかけて来ていた事が記憶に残っています。

19年も経ちましたが、謝罪いたします！

19年が経った今。当時の女子高生たちは、どのように生きているのでしょうか。誰かの妻になり、誰かの母になっているはずの彼女たちのことを思い出すと、自ずと笑みがこぼれます。

今は日本で、“東方神起”をはじめ、数々のK-POPスターのストーリーをまとめる仕事をしており、すっかり5人のファンになりました。

差し支えなければ、この場を借りて、当時の東方神起に謝罪したいと思います。

「あの時、本当に申し訳ございませんでした。こんなに素晴らしいアーティストだとは思いもよりませんでした！これからの活躍も期待しています！」

※日本では「トバンシンギ」として紹介されていますが、韓国語の普通音と濃音を区別するために「ドンバンシンギ」を用いたのでご理解ください。

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(イラスト：corim)

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