2021年に入ってすぐのこと、NU’ESTのメンバーアロンが心理的不安症状を訴え、しばらく休止する事を発表した。NU’ESTは今月19日にカムバックを控えているが、アロンは流動的に参加するという。芸能界という激しい競争世界の中、特に韓国のアイドル事情は日々変動している状況で、心穏やかに過ごすことができないこのシステムに、改めて警鐘を鳴らす時ではないだろうか。 (写真提供:ⓒ TOPSTAR NEWS)
TWICE(トゥワイス)ミナ、ジョンヨン、、カン・ダニエル、MONSTA Xジュホン、VERIVERY(ヴェリヴェリィ)のミンチャン、NiziU(ニジュー)ミイヒ‥そして今年に入って、NU’EST(ニューイースト)のアロンが、心理的不安を訴え、芸能活動を中断した。
今月19日に2ndフルアルバム『Romanticize』をリリースするNU’ESTだが、彼らの所属事務所であるプレディスエンターテインメントは、「2ndアルバムの活動に対して、アロンは流動的に活動する」と発表している。
以前より、心理的な体調不良で活動を休止するアーティストはいたが、近年その事例が増えているのではないだろうか。
明日の見えない、不安な練習生たち
韓国のアイドル産業は、いまや国境を越えて様々な国から「K-POPアイドルになりたい」と志願してくる若者が大挙してきている。日本も例外ではなく、K-POPアイドルを目指せる養成所なども存在するほどだ。
2018年に放送された『PRODUCE 48』でもお分かりの通り、韓国ではアイドルの卵(以下、練習生)でさえ実力の水準が高い。すでに華やかなステージで活躍していた日本のアイドルたちは、その力の差を目の当たりにして驚いた表情は記憶に新しい。
それほどまでに、練習生時代からすでに戦いは始まっており、いつも競争社会にさらされている。
デビューというチケットを掴むために、誰よりも練習をする。若いがゆえ体力はある。少しの睡眠で再び練習に励み「もっと頑張らなければ、もっと上手にならなければ」と自分を追い詰める。
それでも、デビューというチャンスを掴めた若者たちは、良い方だ。
デビューもできないまま、いたずらに時間を過ごす練習生たちは、上岩洞(サンアムドン)や清潭洞(チョンダムドン)に、溢れるほど存在しているという。
夢の舞台のはずが、心と体を削る日々
デビュー組になれたからと言って、スター街道が待っているというのは、ノットイコールだ。
心身ともに最も感受性が強い時期に、メンバーとの共同生活が待っている。相性が良ければ問題ないが、集団となれば相性の悪い人間がいるのは、不思議な事ではない。全員が毎日機嫌が良いとも限らない。
そんな中、起きてから眠るまで、常日頃行動を共にするストレスを、人々は簡単に想像できるだろうか。発散する術のない苛立ちを、どこにどうぶつけてやり過ごせば良いのか‥。
ようやくつかんだデビュー&カムバックが決まれば、分刻みのスケジュールが待っている。レコーディングからミュージックビデオの撮影、リリース後はテレビ出演、雑誌をはじめとするメディアインタビュー、グラビア撮影等々。見た目も気にするためダイエットも欠かせない。使う体力と摂取するカロリーがアンバランスである。
そして知名度が上がれば、ネット社会の洗礼が待っている。不特定多数の、顔も見えない人たちから、毎日何かを指摘される。360°の方向から銃口を向けられてる状況を、気にするなと言う方が無理である。
昨今は、ようやく事務所が悪質ユーザーの証拠を集めて法的措置を取るようになったが、次から次へと現れる悪質ユーザーから守るのは、至難の業だ。
健康的な活動のためのシステム構築は可能か
体の完成していない幼い子どもたちを預かる責任は、事務所にあるはずだ。
ネットワークがここまで主流になったのなら、ネットリテラシーを本人たちに学ばせる必要がある、そしてネットで攻撃されたらどうすべきか、少なからずダメージを受けすぎないための指針はするべきではないだろうか。どんなに楽天的なタイプの人間でも、何が引き金でポジティブがネガティブに切り替わるかなど、誰にも分からないのだから。
アイドル戦国時代が続く以上、その競争は避けられないかもしれない。しかし、彼、彼女たちのガス抜きを助け、ストレス解消のアシスト、精神的相談ができる受け皿、問題点の早期解決、できる事から着手しなければ、状況は変わらないし、ファンの心配や悲しみが終わる事はない。
以前あるアイドルが、自身のファンから「これ以上忙しくしないで、海外活動はやめてほしい」と訴えられたことがあるという。しかし、そのアイドルは「実は海外で活動をしている方が、健康的な生活が送れる。3食きちんと食べられるし、夜には自由時間があって、何よりホテルでちゃんと眠る事ができるから」と返答したのだ。
長きに渡り、新人時代から投資してきたアイドルを”商品”として消費したい事務所の言い分も理解できないわけではない。しかし物の商品と決定的に違うのは、相手も生きている人間だという事。これを決して忘れてはならないし、息の長いアーティストとして活躍できることが、事務所の大きな力にもなるのではないかと、思うのだ。
これ以上、大切なアーティストの心身を壊す前に、一人でもこの事案に気が付く大人が現れると良いのだが--。
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