ラジオDJであり、韓国大衆文化ジャーナリストであり、韓流ファンミーティングMCのパイオニアである古家正亨さんの連載コラム『古家正亨の韓々学々』!第9回目のテーマは、ずばり“お金”。日本含め、多国から韓国へK-POP歌手を目指す若者が増えた今だからこそ、避けて通ることのできない“現実”を教えてくれました。

“日本から世界へ”と夢や希望をもって努力しているエンターテイナーを目指す日本人の若者たちにとって(人によっては)その登竜門的場所となりつつある「韓国」。もちろん、今、韓国のエンターテインメントの勢いは多岐にわたって見られ、日本をはじめ世界においても、もはや一過性のものではなくなってきている。日本でドラマ『冬のソナタ』が流行してから17年になろうとしていることからも、それは理解できるだろう。

そんな人々の真の目的は、韓国のエンターテインメント業界を介して、自分自身が有名になり、そしてその先にあるのは当然“お金”であることは、誰も否定できない。しかし、現実というものは非常に厳しいものがある。

TWICEは韓国人、日本人、台湾人で構成された

韓国人、日本人、台湾人で構成されたTWICE。(画像出典:TWICE 公式Instagram)

韓国の国税庁が提出した資料によれば、2018年に所得を申告した歌手6372人の年間所得は計4095億ウォン(日本円で約380億円)となり、1人当たりの平均所得は6428万ウォン。この数字は、2014年の統計と比較すれば一目瞭然だが、計2864億900万ウォン(歌手4855人の年間所得合計)となり、31.3%も増加している。これは明らかに、K-POPの勢いがそのまま反映された形と言えるが、問題はここから。

18年の歌手の所得上位1%に当たる63人は合わせて2171億6000万ウォンを稼ぎ、歌手全体の所得の53%を占めた。1人当たりの平均は34億4698万ウォンで、残りの99%の1人当たり平均(3050万ウォン)の113倍。当然、人気者には富は集まるわけだが、この上位1%になるのは、ごく限られたスターだけということになり、決してK-POPスターになったからと言って、経済的に幸せな生活が待っているというわけではない。

BoAや東方神起の出現は、日本にも大きな影響を与えた。

BoAや東方神起の出現は、日本の音楽界にも大きな影響が。(画像出典:Amazon)

筆者も2000年からK-POP界で仕事をさせてもらっているが、あれから20年。ずいぶんその収益構造は変化したように思う。

当時は、歌手たちの給与は決して高くはなく、しかも高学歴のスターが多かった。というのも、両親が芸能の世界で働くことに否定的な感情を持つ人も少なくなく、せめて学歴だけはと、たとえ芸能の世界で失敗したとしても、それなりの人生を歩めるように、大学に進学、および通いながら歌手になる人が少なくなかった。また、オーディション番組全盛の今だが、決して今に始まったことではなく、韓国でもかつて「大学歌謡祭」という今でいうオーディション番組のようなコンテストがあり、ここが一般人にとって芸能の世界への登竜門的役割を果たしていたが、このコンテストに参加するためには、大学生でなければならなかった。つまり大学に入ることがある種の芸能界への近道でもあったのだ。

IU

IU(画像出典:IU 公式Instagram)

また、インディーズ・シーンにおいても、韓国の場合は日本とは違い、苦労してアルバイトしながらコツコツお金を貯めて楽器を買い、メジャーデビューを目指してインディーズ活動をするという苦労人タイプは極めて少なく、どちらかといえば生活に余裕のある環境で育った人々がそれなりの音楽教育を受け、その延長線上にバンド・アーティスト活動を据えていた人が多かったのだ。

ところが2000年代に入り、BoAや東方神起といったスターの誕生で、活躍の場が国内のみならず、日本、そして海外と広がっていくと、それまで韓国人が抱いていた歌手やアーティストに対するイメージが徐々に変わり、極めつけは当時「国民の妹」と呼ばれていた人気歌手であり女優のIUが、あえて大学受験をせず、芸能の仕事に邁進することが発表されると「芸能人であるために大学に行かなくては」という概念にも少しずつ変化が訪れ始める。しかしこの彼女の選択の意味はもう1つあり、高卒であっても、自分が何かを極めることができれば、大学という選択肢が決して人生の(経済的)成功と結びつくものではないことを表しているともいえるだろう。

韓国の方式を取り入れてデビューしたNiziU

韓国方式のオーディションで選抜されたNiziU。(画像出典:NiziU 公式Instagram)

しかし残念ながら現状としては、経済的な成功を収めている人は先の数字からも見えるように、決して多くはない。歌手やアーティスト本人のみならず、音楽業界で働くスタッフたちの待遇も、一部を除いて決して良いものとは言えないのが現状である。それでも、今、この瞬間もその1%に入るために、血汗涙を流し、何かを犠牲にしながらも、練習に励んでいる練習生、そしてデビュー間もない歌手たち。

そんな彼ら・彼女らを、我々ファンはただ支えるしかないわけだが、同時にそのキャリアに何らかの理由でピリオドを打った際、彼ら・彼女らを受け入れる社会を用意してあげることも大切ではないだろうか。

『古家正亨の韓々学々』筆者-古家正亨

コラム『古家正亨の韓々学々』筆者-古家正亨

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古家正亨(ふるやまさゆき)
ラジオDJ /テレビVJ /MC /韓国大衆文化ジャーナリスト
<レギュラー>
NHKラジオ第1「古家正亨のPOP★A」(毎週水曜 21:05 – 21:55 生放送)
FM northwave「Colors Of Korea」(毎週土曜 11:00 – 11:30)
CROSS FM「深発見!Korea」(毎週土曜 18:30 – 19:00)
InterFM897「TALKIN’ ON SUNDAY」(毎週日曜 朝7:00 – 8:00)
Twitter:@furuyamasayuki0








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