グローバルボーイズグループBTS(防弾少年団)が、7月9日にリリースした『Permission to Dance』が、韓国SBSの音楽番組『人気歌謡』で3週連続1位となり、トリプルクラウンを達成した。驚くべきことは、彼らが今回この番組には、1度も出演していないということだ。
世界的な人気を集めている7人組ボーイズグループ、BTS(防弾少年団)が、SBS音楽番組『人気歌謡』で3週連続1位を獲得し、トリプルクラウンを達成した。
今回3冠を記録した『Permission To Dance』は、イギリスの人気シンガーソングライター エド・シーランとコラボレーションした楽曲として知られており、米ビルボードのメインシングルチャート”Hot 100″でも1位を獲得している。
BTSはこれまで、アメリカやイギリス、日本など海外のテレビ番組に出演し、『Butter』や『Permission To Dance』など、最新曲のパフォーマンスを披露してきたが、何故か最近は韓国の音楽番組に一切出演していない。
昔は、韓国芸能界において圧倒的な力を誇示していた韓国テレビ局だったが、どうやら現在はその力関係が変わってきているようだ。
ここでは、韓国音楽番組と人気アイドルの、愛憎(?)の歴史を振り返ってみたい。
音楽番組の1位が”ステータス”だった時代
まだ音源配信サービスや、海外進出という概念がなかった時代、K-POPアイドルにとって音楽番組の1位というタイトルは、韓国国内のCD販売量とともに、人気と影響力を示す重要なステータスの1つだった。
また、テレビの持つ影響力と波及効果は、実に大きかった。どれだけ高い知名度を誇る人気アイドルであっても、新曲プロモーションは、テレビが主戦場だったのだ。
テレビで新曲を披露すれば、翌日にはCDが売れ始める。さらに音楽番組で1位を取れば、CDは飛ぶように売れる‥そんな構造の下、”共生関係”を築き上げてきた両者だったが、厳密に言うと、テレビ局の力の方が遥かに上回っていた。
しかし近年、若者のテレビ離れに相まって、Youtube(ユーチューブ)やSNSがその存在感を増大させ、次第にテレビの持つ力に陰りが見え始める。
アイドル側も、テレビに依存せずともSNSや動画配信を中心にファンとコミュニケーションを図れば、自然とネットワークの中でファンダムが結成され、新曲プロモーションはテレビの力を借りなくても自力でまかなえる時代になっているのだ。
かつての力関係は終焉を迎えていると言っても過言ではなく、テレビ局からの”恩恵”はもはやなく、数ある”宣伝ツール”の1つに転落してしまった。
テレビ局自らが招いた信頼性の低下
2015年テレビ局に関する“ある疑惑”が暴露され、韓国芸能界を騒然とさせた。
その疑惑を韓国メディアのプレシアンが、韓国芸術総合学校で教授を務めるイ・ドンヨン氏(以下、イ氏)の言葉を引用しながら、詳しく伝えている。
2015年、イ氏は音楽番組内で行われていた常習的な順位操作をはじめ、番組に出演しないアーティストを1位候補から外すなどという、テレビ局の横暴を暴いた。
イ氏は、このようなテレビ局に暗黙の了解を示す芸能界を”沈黙のカルテル”という表現を用いながら強烈に批判。これをきっかけに、テレビ局は自らの過ちで、権威性と信頼性を低下させていったのだ。
業界内外からの、自浄を求める声に応じざるを得なくなったテレビ局は、順位操作を根絶。現在は音楽番組に出演しなくても、実力通りに1位が取れるようになっている。
テレビ局側は、苦虫を噛みながら白旗を掲げたのである。
デジタル音源の普及と進む海外進出
近年はCDの販売量が大幅に減少し、デジタル音源やストリーミング配信、サブスクリプションなどで音楽を楽しむ人が増えてきた。
また、YouTubeなどの動画配信サイトを有効活用しながら、人気アイドルは海外ファンを多く獲得できるようになり、かつて”障壁”とも呼ばれていた欧米の音楽ファンも取り込みやすい環境にある。
多忙なスケジュールをこなしながら音楽番組に出演するよりも、海外向けのコンテンツを独自で制作する方が効率が良く、さらに自分たちの音楽を直接世界に届けられるというメリットがあるのだ。
***
まさに”隔世の感”を抱かざるを得ない韓国の音楽番組事情。
真新しいコンテンツがテレビ側から生まれなければ、今後ますます音楽番組の出演を拒むアイドルやアーティストが増えていく可能性も‥。そうなれば、現在数ある音楽番組も、たとえそれが老舗であったとしても、日本の音楽番組がそうであったように、淘汰される日が来るかもしれない。
BTS
BTS(防弾少年団)は2013年6月13日にデビューした韓国の7人組男性アーティストグループで、パン・シヒョクのプロデュースにより誕生した。
HYBE(旧Big Hitエンターテインメント)所属。
デビューアルバムは『2 COOL 4 SKOOL』、デビュー曲は『No More Dream』。グループ名の”防弾少年団”には、10代、20代に向けられる抑圧や偏見を止め、自身たちの音楽を守りぬくという意味が込められている。
ハングル表記は”방탄소년단(バンタンソニョンダン)”から”バンタン”と呼ばれることが多い。
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