本年度のアカデミー賞®国際長編映画賞部門の韓国代表に選出、カンヌ国際映画祭コンペティション部門で監督賞を受賞した、パク・チャヌク監督最新作『別れる決心』が、TOHOシネマズ日比谷他全国公開中。BTSのRMも5回も鑑賞したという程大ハマりした本作は、日本でもリピーターが続出している。そこで、2回目以降の観賞をお楽しみいただけるよう、ネタバレを含む仕掛け“超絶技巧を7大ポイント”が公開された。
パク・チャヌク監督最新作『別れる決心』が、TOHOシネマズ日比谷他全国公開中。

パク・チャヌク監督最新作『別れる決心』は、TOHOシネマズ日比谷他全国公開中。(© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED)
BTS(防弾少年団)のRMは5回も鑑賞したという程大ハマりした本作は、日本でもリピーターが続出している。そこで、2回目以降の観賞をお楽しみいただけるよう、ネタバレを含む仕掛け“超絶技巧を7大ポイント”が公開された。
『オールド・ボーイ(2003)』や『お嬢さん(2016)』など、唯一無二の作品で世界中の観客と批評家を唸らせ続けてきたパク・チャヌク監督の最新作に、公開前から大きな注目が集まったが、ついに日本でも2月17日より全国公開!
巨匠が、エロスもバイオレンスも封印して挑んだ“大人のラブロマンス”に、世界中でリピーターが続出となったが、日本でも「先が読めなくて、目が離せない」「何気ないセリフや小道具に、見終わった後も余韻が残る」「もどかしくて、何度も観たいと思わせる」などと、早くもSNSなどで話題沸騰中だ。
一癖も二癖もあるセリフが話題だが、そのほかにも本作の魅力のひとつでもある舞台装置、衣裳、編集、小道具など細部へも監督のこだわりは徹底されており、観るたびに新たな発見をもたらしてくれる本作の仕掛けを徹底解説!
*この記事にはネタバレが含まれています、ご注意ください。
刑事と容疑者という、惹かれあってはならないもの同士の禁断の愛を描いた本作は、過激なラブシーンは一切なく、さらに言葉の壁がもどかしさを掻き立て、なんともロマンティックでエロティックだ。
「愛してる」という言葉を使わないラブストーリーという、監督らしい変態性がここにも表れている。
1.全体を通して貫かれる対比構造
本作では、刑事と容疑者という禁断の愛が描かれているが、言葉の壁や“愛”という抽象的なものを描いているため、「曖昧さ」が物語のミステリアスな雰囲気やサスペンス要素を膨らませてくれている一方で、“対比”がふんだんに盛り込まれている。

(© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED)
舞台となる“海の町”と最初の事件が起きる“山”。そしてへジュン(パク・ヘイル扮)の妻・ジョンアン(イ・ジョンヒョン扮)は原子力発電所で働く理系人間なのに対し、ソレ(タン・ウェイ扮)は孔子の言葉を引用するような文系人間。
煙草を嫌うジョンアンに対し、煙草を好むソレなど、多くの対比構造が盛りだくさんだ。
2.へジュンとソレの類似性
へジュンとソレが対面して最初の事情聴取のシーン。
ソレが「夫はどんな姿ですか?」と尋ねると、へジュンが「言葉で説明しますか? それとも写真で?」と返す。ソレは「言葉」と言うが、すぐに「写真」と言い直す。この時に注目してほしいのが、へジュンの表情だ。

(© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED)
最初の「言葉」と言った時は、少し落胆したような表情をする。「写真」と言い直すと、少しうれしそうに写真を見せる。そして「あなたは僕と同じく、言葉ではなく写真を選ぶタイプだと思った」と告げる。
これはへジュンも写真派で、現実を直視するタイプだという事を表している。この時に、へジュンの恋心はすでにスタートしていたことが分かる。
ほかにも、山より海派、同じスマホを使っている、同じ車に乗っているなど、複数の共通点が2人には存在している。
3.ソレの夫たちに浸食されていくへジュン
もはや、仕事か趣味か分からないレベルで、ソレの張り込みを続けるへジュンだが、ソレにのめり込むあまり、張り込みや実際にソレの部屋へ訪れて目撃した、ソレの夫たちの癖や好んでいたものを嗜むようになっていた。

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最初の夫、キ・ドスは台湾のウイスキー『KAVALAN』を愛飲していた。ソレの部屋でそれを見つけたへジュンは、その後の刑事仲間との食事のシーンで『KAVALAN』をキ・ドスと同じようにスキットルに注ぐシーンが描かれている。
ほかにもソレの2人目の夫・イム・ホシンは指をボキボキ鳴らすのが癖だが、へジュンは一度会っただけにもかかわらず、とあるシーンで、おそらく自分でも無意識的に指をボキボキ鳴らしている。
“品があり優しい刑事”というキャラクターには、全く似つかわしくない行為だが、ソレへのめり込むあまり、ソレの夫たちに自分を寄せていくのだった。
4.本作の始まりである『マルティン・ベック』シリーズの登場
『別れる決心』は、監督曰く「私が好きなスウェーデンの推理小説、警察官のマルティン・ベックシリーズのような、私好みの性格の刑事キャラクターを登場する映画を作りたいと思いました」と、本作のはじまりは『マルティン・ベック』シリーズであると公言しているのだが、なんと本編に登場しているのをお気づきだろうか?
へジュンがソレに手料理をふるまうべく、自宅にソレを招待したシーン。へジュンが腕を振るっている間、ソレは部屋を散策に。デスクの電気を点けると机の上に積まれていた本の表紙が映し出されるのだが、その本こそが『マルティン・ベック』シリーズなのだ。
へジュン自身も愛読し、マルティン・ベックのような刑事になりたいと思っていたのだろうか?
5.壁紙、衣装に込められた意味
ソレが劇中、青色にも緑色にも見える衣装を身に着けているのだが、これはソレがファム・ファタールなのか、はたまた本当にへジュンを愛する女性なのか、という事を比喩的に表現する装置になっている。

(© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED)
また、ソレの部屋の壁紙だが、これも海にも山にも見えるようなデザインになっている。
それぞれ衣装デザイナー、美術監督のアイディアで監督がそれを採用し、それに合わせてセリフも変更したというチームパク・チャヌクならではのこだわりとなっている。
6.波がソレの横顔に!
ラスト、ソレを追い海へとやって来たへジュン。車をソレの車の後ろに止めるシーンで、真上からの俯瞰の映像になるのだが、そのシーンでの波の形がソレの横顔になっている。これに気づいた人は、相当なもの。
7.へジュンは結局ソレの手の中
ソレを追って海へ来たへジュン。ソレは自らの命を絶とうと砂浜に深い穴を掘り、その中に入る。徐々に潮が満ちて穴の中に水が入り始め、ソレは手のひらで水と砂の感触を味わう。

(© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED)
そこでシーンが切り替わる時、パっと切り替わるのではなくフェイドアウトする。次のシーンでは、砂浜を血眼になって走り回るヘジュンの姿。その瞬間、へジュンはソレの掌の上を走り回っているように見えるのだ。
ほかにも、パク・チャヌク監督やスタッフたちのとんでもなく細部までにわたるこだわりが満載の本作。
一度目はへジュン目線で、二度目はソレ目線でという楽しみ方が、韓国ではブームになっていたそうだ。
日本の観客も、ぜひスクリーンで新たな発見を楽しんでほしい。
また、諏訪部順一=ヘジュン、沢城みゆき=ソレと超人気声優が主演2人を演じた日本語吹替版も絶賛上映中。
全編・全画面に散りばめられた超絶技巧&注目のポイントを逃さず体験でき、同時に2人の決めセリフも超人気声優の演技で楽しむことができる吹替版は、リピート鑑賞にもお勧めだ。
『別れる決心』
男が山頂から転落死した事件を追う刑事ヘジュン(パク・ヘイル扮)と、被害者の妻ソレ(タン・ウェイ扮)は捜査中に出会った。
取り調べが進む中で、お互いの視線は交差し、それぞれの胸に言葉にならない感情が湧き上がってくる。いつしか刑事ヘジュンはソレに惹かれ、彼女もまたへジュンに特別な想いを抱き始める。
やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに思えた。しかし、それは相手への想いと疑惑が渦巻く“愛の迷路”のはじまりだった‥。
***
監督:パク・チャヌク
脚本:チョン・ソギョン、パク・チャヌク
出演:パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ
提供:ハピネットファントム・スタジオ、WOWOW
配給:ハピネットファントム・スタジオ
原題:헤어질 결심|2022 年|韓国映画|シネマスコープ|上映時間:138 分|映画の区分:G
© 2022 CJ ENM Co., Ltd., MOHO FILM. ALL RIGHTS RESERVED
公式HP:https://happinet-phantom.com/wakare-movie/
公式twitter:https://twitter.com/wakare_movie
#別れる決心
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