韓国のTVINGとtvNで、最近放送が開始されたドラマ『ハピネス』が好調だ。視聴者は、本作で新型コロナウイルス感染症で苦しんだ現実を重ね、共感や恐怖を体感しているようだ。新種の感染症から隔離され、孤立したマンションで日常を取り戻せるのか、ハラハラした展開が期待されている。 (記事・写真提供:ⓒ TOPSTAR NEWS)
tvNドラマ『ハピネス(Happiness/以下、ハピネス)』が現実を反映した、ニューノーマル都市スリラーの真価を発揮している。
そんな『ハピネス』(演出:アン・ギルホ、脚本:ハン・サンウン、企画・制作:スタジオドラゴン)に向けられた、賛辞と好評が熱い。
『ハピネス』はポストコロナの近未来を背景に、階層社会の縮小版であるマンションに孤立した人たちの生存記を描いたニューノーマル都市スリラーだ。
現実とのシンクロに視聴者が共感
様々な人間が集まり暮らすマンションが、原因不明の感染病によって封鎖されることに。そこで繰り広げられる亀裂と恐怖、生きるための死闘と心理戦を緻密に描き出す。破格的なテーマなだけに、放送前から大きな話題を呼んでいた。
新種の感染病で日常が崩れ始めた人々の混乱は、パンデミックを経験した今の状況と重なり、リアルな恐怖を掻き立てる。平凡な日常への回復が切実な今、”幸せ(ハピネス)”を取り戻すために孤軍奮闘する人々の姿は、共感以上に、重みのあるメッセージを投げかけた。これに、視聴者たちは賛辞を送っているのだ。
本作が、熱い反応を引き起こしている理由は、ジャンル物のお約束を踏襲していないという点、そしてリアル過ぎる世界観にある。
“狂人病”そのものより、感染したことで変わっていく人間という生き物と現実にスポットライトを当て、ジャンル物を一段階引き上げた。感染病の原因として浮上した、経口用肺炎治療薬“ネクスト”の副作用が生んだ惨事さえも、現実にありそうなエピソードだ。
視覚的恐怖を前面に押し出さなくとも、究極のサスペンスを生み出した決定的な違いがリアリティーにある。そのため、”人”と”事件”とのバランスに心血を注いだと言うのはアン・ギルホ監督。
また人物に集中し、心理的要素を強調したち密な演出に魂を込めたという、俳優のハン・ヒョジュ、パク・ヒョンシク、チョ・ウジンをはじめとする、俳優たちの熱演も好評の理由だ。
“マンション”という日常的空間が舞台
『ハピネス』は、リアルな恐怖を表現するために、最も韓国的であり日常的な空間の”マンション”をメイン舞台に選んだ。
ユン・セボム(ハン・ヒョジュ扮)とチョン・イヒョン(パク・ヒョンシク扮)が、アパートで遭遇した現実は”狂人病”より残酷だった。マンションに存在する階層間の差別は凄まじく、感染症が呼んだ恐怖は別の破局を呼んだ。溢れる新種感染症のニュースや災害のメールに、無関心になってしまった人々。眼前に迫ってくることのない苦痛は他人事であり、むしろ危機をチャンスだと思う者も。
昨日と違う今日を実感できない人間の姿は、今の私たちの現実とあまり変わりがない。
*コーホート隔離にも深刻さを悟らず、自分の利益を追う人々。多数の幸せのために少数の犠牲が強要される現実は、感染病の裏にある、また別の危機を突いて寒気を襲った。ここに怪物のような攻撃性を見せても、一定時間が過ぎれば正常に戻る感染者、これに対する人たちの異なる反応は”人間性のジレンマ”を考えさせ、興味をそそった。
*コーホート隔離:ある時点において、年齢や性別など共通した因子を持ち、観察対象となる集団のこと(出典:コトバンク)。
放送直後、オンライン掲示板では熱いコメントが溢れた。
「これ以上のリアルはない。現実が反映された姿にゾっとする」「さすが! 信じて見られる(不安要素がないということ)作家・監督・俳優」「刺激的なシーンがないのに、何度もトリハダ。現実的だからなおさら怖い」「大切な人と一緒にいる日常が、どれほど重要かを悟らせてくれる作品」「現実の恐怖が一味違う感じでやってきた」など、好意的な反応だ。
感染者と孤立した”101棟”の人々は、生存するためにどんな選択をするのか。誰もが感染者になりうる極限の混乱の中、あちこちに危険が潜む閉鎖されたマンションで、生き残り、平凡な日常にを取り戻すことができるのか‥彼らの生存のためのカウントダウンが始まった。
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