- 『21世紀の大君夫人』が、歴史歪曲との指摘により放送終了後も激しいバッシングを受けています。
- 歴史的アイデンティティーを重視する視聴者から批判が殺到し、大統領府の国民請願には釈明を求める声が。
- 『21世紀の大君夫人』をはじめ、これまで議論となった歴代の時代劇を紹介します。
韓国のドラマ界に、またしても重い空気が立ち込めています。渦中にあるのは、現代の韓国に立憲君主制が存続していたら、という架空の設定で描かれたロマンチックコメディー『21世紀の大君夫人』(MBC/2026)。
韓国の一部視聴者の間では、歴史の歪曲を主張する声が上がる事態となり、作品が終了したにもかかわらず、議論はおさまるどころか益々ヒートアップ。現在、韓国大統領府の*国民請願には、釈明を求める声が殺到しています。
*国民請願:ウェブサイトから、国民が国政など対する要望や苦情を申し立てることができるオンラインシステムのこと。
なんとその数は5万人以上。歴史への深い敬意や、自国のアイデンティティーを何よりも大切にする熱い国民性が関係しているのでしょうか。激しい反発は、当分の間おさまりそうにない気配を見せています。
韓国の時代劇の多くがバッシングを受けてきたように、『21世紀の大君夫人』も、悲劇は避けられなかったよう。もはや韓国時代劇が避けては通れない通過儀礼になっていると言っても過言ではありません。
ドラマといえど、制作陣側の史実の調査不足をはじめ、物語を盛り上げるための演出上のアレンジ、創造の自由などは、歴史の面においては許されない風潮が強いのが現実です。
『21世紀の大君夫人』はなぜ韓国国民の逆鱗に触れたのか
そんななかで、『21世紀の大君夫人』が問題視されたのは、大韓民国を背景にしながらも、中国式の服装や礼法、言葉を分別なしに使用していたという点。
重要な即位シーンで主人公が身に着けていた冠や、臣下が王に対して発した言葉が、中国に従属していた時代の形式だったというのが主な主張です。

『21世紀の大君夫人』(画像出典:MBC)
物語の設定が独立国であったにもかかわらず、属国のような扱いになったことが、自国の歴史を重んじる一部視聴者にとっては、見て見ぬふりができなかったようです。
放送期間中に制作陣やキャストが謝罪に追い込まれた後も激しい批判が続き、最終話を迎えたにもかかわらず、国民請願によって作品の廃棄が求められている状況。反発の根深さを物語っており、視聴率2桁越えを果たした人気作であっても容赦ない姿勢です。
本作以外にも韓国時代劇には、魅力あるドラマが残酷なまでに痛烈な批判を受けてきた過去があります。では、実際にどのような点が議論となったのか、代表例を挙げてご紹介します。
スノードロップ (JTBC/2021)
『スノードロップ』は、放送開始前にシノプシスが公開されるやいなや大きな騒ぎとなり、出鼻をくじかれてしまった作品。韓国の歴史に暗い影を落とした民主化運動が激しかった1987年のソウルを舞台したストーリーで、北朝鮮のスパイと*安企部(韓国情報局)の美化や、民主化運動の軽視が議論の中心になりました。
*安企部:軍事政権下において弾圧や拷問などをしていた韓国の諜報機関。

『スノードロップ』(画像出典:JTBC)
放送中止を訴える国民請願が30万人を越える事態にまで発展し、当初は、誤解であると主張をしていたJTBCもついには、大衆を不快にさせた点や歴史を描くうえでの配慮が足りなかった点などを示唆する説明をすることに。協賛企業も、内容を知らずにスポンサーになったことを謝罪しました。
朝鮮駆魔師 (SBS/2021)
『朝鮮駆魔師』は、わずか2話で放送が打ち切りになるという前代未聞の結末を迎えた超大作。320憶ウォンもの制作費を投入して作られた作品でしたが、実在した歴史的人物を見下したかのように見える描写があるとして大ブーイング。

『朝鮮駆魔師』(画像出典:SBS)
また、朝鮮の王宮には、中国のお酒や料理などが並び、衣装やセットの一部にも中国文化を覗かせるものがあるとして、一部視聴者が歴史の歪曲であると激怒。第1話から批判が鳴りやまず、テレビ局であるSBSが苦渋の決断を迫られた構図です。
海外での放映権まで契約解除となり、完全に闇に葬られてしまった韓国のドラマ史に残る最も強烈な黒歴史。ファンタジーであっても、最低限守るべき一線は超えてはいけなかったようです。
哲仁王后~俺がクイーン!?~ (tvN/2020)
『哲仁王后~俺がクイーン!?~』は、本国で最高視聴率17.3%を記録し、日本でも多くの韓ドラファンに愛されたコメディー時代劇。主演シン・へソンが演技力を認められて、『百層芸術大賞』の主演女優賞にノミネートされるなど大きな話題を呼びましたが、その裏では、一部描写について制作陣が謝罪したことが。

『哲仁王后~俺がクイーン!?~』(画像出典:tvN)
朝鮮王朝の国政などを記録した歴史書『朝鮮王朝実録』を、ゴシップ誌という意味合いを持つワードで表現したことや、実在した王族をコミカルに描き過ぎた点などが、歴史への冒涜だとみなされたのです。
主人公の辛口な発言や、登場人物のクスっと笑えるような言動が、本作の最大の魅力でしたが、歴史要素を描くうえでは問答無用にバッサリ斬られるのが韓国。第3話からは冒頭で、登場人物と事件などは全てフィクションであるという免責事項が表示されるようになりました。
奇皇后 ふたつの愛 涙の誓い (MBC/2013)
『奇皇后 ふたつの愛 涙の誓い』は、放送前から、シノプシスで紹介された歴史的人物の美化が議論となって、不穏な空気のなか初回放送を迎えた作品。高麗時代に民を苦しめた暴君と言われる忠恵王(ちゅうけいおう)を、魅力的なキャラクターに設定していたのが理由でした。

『奇皇后 ふたつの愛 涙の誓い』(画像出典:MBC)
このため、MBCは泣く泣く、名前を忠恵王からワン・ユに変更、架空の人物ということにして放送がスタート。しかし、韓国で悪女だったと語り継がれている奇皇后(きこうごう)を、あまりにも人間的に秀でた人物であるかのように描写したことから、またしても反発の声が。
栄誉ある授賞式で、役者陣が数々の賞を受賞できるほどの人気を得ましたが、歴史議論が巻き起こらなければ、さらに高い評価を得ることができたのではないかと言われている作品の1つです。
その他、『善徳女王』(MBC/2009)や『王女ピョンガン 月が浮かぶ川』(KBS/2021)なども、歴史の歪曲だとの意見が上がったことがあります。
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