- ナムグン・ミンが主演を務めるMBC時代劇『恋人』シリーズが、韓国で視聴率・話題性共に獲得し、無双状態だ。
- 第15話と第16話では、韓国映画などで時折耳にする女性を侮辱する言葉”ファニャンニョン”に関する物語が描かれ、観る者に強烈な印象を残した。
- ”ファニャンニョン”という言葉が誕生するに至った韓国の痛々しい歴史を、ドラマの内容とともに紹介する。
今韓国では、ナムグン・ミン主演ドラマ『恋人』シリーズ(MBC/2023)の無双ぶりが止まらない。
時代劇としてはもちろん、放送局であるMBCとしても久しぶりに高視聴率を獲得している作品で、話題性の面においても群を抜いており、現在本国で放送中のシーズン2は前作にも増して支持されている状況。
最終話まで残すところあと4話。どこまで数字を伸ばすのか熱い視線が注がれている。
そんな本作は、清が丁卯の乱以後2回目に朝鮮半島を侵略した1636年の”丙子の乱”を背景に、激動の時代を生きる男女のロマンスを描いた作品だ。
単なるラブストーリーではなく戦争が絡んでいるため、惹かれ合いながらもなかなか結ばれない2人の関係性が大きな見どころだが、第15話と第16話では歴史的側面が特に色濃く描かれ、韓国が持つ過去の悲しい出来事が観る者に強烈な印象を残した。
それは、”ファニャンニョン(還鄕女)”に関するもの。このワード、韓国映画などで耳にしたことはないだろうか。”節操のない女”という意味で、女性を最も侮辱するといっても過言ではない表現なのだが、この由来が『恋人』で描かれている。
丙子の乱が起こり、清の圧倒的な軍事力に降伏せざるを得ない状況となった朝鮮第16代国王・仁祖(インジョ)は、野蛮人を意味する“オランケ”という言葉で蔑んでいた民族に対し、事実上土下座をする立場に。
劇中でも屈辱的なシーンとして描かれているが、これに輪をかけるように清は捕虜を要求。連行された女性のほとんどが、性奴隷にされたという。
お金を払ったり、なんとか逃げ出したりするなど、必死の思いで母国に帰った人もいたそうだが、彼女たちを待ち構えていたのは安堵や幸せではなく新たな試練。同族からの差別だった。
“オランケに汚された女性”として見下し、故郷に還ってきた女(還鄕女)という意味で”ファニャンニョン”と呼んで蔑視したのだとか。
『恋人』では、ヒロインのギルチェが故郷に帰り、夫から浴びた第一声「あなたはあっち(清)でなにもなかったんですよね」という、妻を心配するどころか貞節を守ったのかを問う言葉に、”ファニャンニョン”と呼ばれた女性たちの置かれていた状況が見え隠れしている。
また、「朝鮮女性の恥さらし」や「恥知らずで厚かましい」、「オランケたちに汚された女のくせに」と、近所の人たちがひそひそと話す場面なども登場し、”ファニャンニョン”という言葉の持つ痛々しい歴史が描かれた。
ちなみに当時は彼女たちに関する王への上訴が絶えなかったそうで、妻が貞操を失ったため離婚を許可してほしいと訴える夫から、それとは逆に、ファニャンニョンという理由でパートナーから別れを告げられた娘の、婚姻生活の継続を求める実夫までいたという。
『恋人』は、韓ドラ界で絶大な支持を得るジャンルであるロマンスを物語のメインに据えつつ、丙子の乱とその後の朝鮮をしっかりと描いた作品となっている。
日本では11月24日からKNTVで放送がスタートする予定。トキメキも歴史も両方楽しみたい韓ドラファンは、ぜひご覧になってはいかがだろうか。
丙子の乱を背景にした物語は、よくある権力争いや身分違いの恋を描いた時代劇とは一味異なる仕上がりとなっている。
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