社会を映す鏡と言われる、韓国ドラマ。特に今期の人気作には、韓国イシューが盛り込まれた作品が多く見られています。ここでは、韓国メディア・聯合ニュースが取り上げた社会派ドラマをご紹介します。

社会を映す鏡であり、人間模様を盛る器とも言われている韓国ドラマ。

こう呼ばれるように、韓国ドラマ界には社会派の作品が多く見られています。それは、えぐいほど現実的な要素が盛り込まれ、時に視聴者に”疲労感”を与えるほど。

テーマや設定はもちろん、劇中に登場するセットや服装と、細部に渡って”現実的”な要素が登場してきます。

tvN『シスターズ』

tvN『シスターズ』(画像出典:tvNドラマ)

tvN(Netflix)『シスターズ』で例えると、主人公の3姉妹が住むアパートがまさにそれ。部屋の間取り、建付けの悪い窓、所狭しに配置されたインテリア、使い古された小物と、生活を想像できるようなアイテムが並んでいます。それらが語るのは、彼女たちが”貧困”という2文字から逃げられないという現実。

これに加え、キャラクターの振る舞いや置かれた立場と、様々なところにも現実感は施されており、本作を見ただけでも、韓国ドラマがいかに”現実性”を意識して取り上げているのかが分かります。

韓国メディア・聯合ニュースでは、「ドラマは私たちの社会問題を熟考する鏡です。変わった社会の視線を見せてください」とし、社会的な雰囲気や韓国社会が悩んでいるイシューを積極的に盛り込んでいる3作品を取り上げています。ここでは、その作品を紹介していきます。

tvN(Netflix)『シュルプ』

tvN『シュルプ』は日本でも話題の韓国ドラマ

日本でも話題の韓国ドラマ、tvN『シュルプ』(画像出典:tvN)

女優キム・ヘスが主演するフュージョン時代劇『シュルプ』では、LGBTQ(性的少数者)である皇子を認めた母性愛を描いています。

過去にも時代劇に性少数者のキャラクターが登場したことがありましたが、間接的に妙な雰囲気を残すだけであったりと脇役に留まることが多かったようです。

本作では、国母である中殿ファリョン(キム・ヘス扮)が、秘かに女装を楽しむケソン大君(ユ・ソンホ扮)の性アイデンティティーを母として包み込む姿が登場しました。

ケソン大君の秘密を知り、少なからずショックを受けたファリョンでありましたが、「彼の心を考えてみました。乗り越えられずに、それを受け入れなければならなかった時、どれほど怖かったことでしょうか。私は背を向けることができなかった、母親だから」と語り、ケソン大君に女装した姿を描いた肖像画と母の形見であるかんざしをプレゼントし、彼を慰めました。

このファリョンの台詞は、性少数者に対する韓国社会の変化した認識を反映したという評価を得ています。

tvN(U-NEXT)『月水金火木土』

tvN『月水金火木土』は女優パク・ミニョンが主演

女優パク・ミニョンが主演する、tvN『月水金火木土』(画像出典:tvN)

それぞれの理由で”非婚”を選んだ人々が登場する、『月水金火木土』。

契約結婚マスターのチェ・サンウン(パク・ミニョン扮)は、顧客の完璧な非婚生活を営むためのヘルパーを自任しています。

彼女の顧客は非婚を望んでいるものの、親や親戚から結婚を促されたり、厳しい社会的な視線など、非婚で得る損失を埋めるためにチェ・サンウンを必要としています。

劇中、顧客たちは「私のような独身はどうやって25年間ほど出したご祝儀を回収するのか」、「会長が事業の話を夫婦同伴の集まりだけでされる」など、非婚で体験した苦衷を吐露しています。

実際、韓国ではシングルライフを選択する人が増えているようです。子どもを育てるのにかかる莫大な費用を、自分のために使おうと考える人も少なくないといいます。

これは社会が抱える様々な問題、年金崩壊や自然災害など将来への不安が重なり、老後の不安が拭えないことからきているようです。

JTBC『The Empire:法の帝国』

JTBC『The Empire:法の帝国』はキム・ソナ、アン・ジェウクと実力派俳優が共演

キム・ソナ、アン・ジェウクと実力派俳優が共演した、JTBC『The Empire:法の帝国』(画像出典:JTBC)

『The Empire:法の帝国』では、殺人事件などを捜査する過程で、フェイクニュースを広める個人放送ストリーマーの扇動を描いています。

殺害された被害者の恋人であるハン・ガンベク(クォン・ジウ扮)を、犯人に追い込む個人放送ストリーマー。

彼らは、ハン・ガンベクが犯人だと確信する証拠があるように「自分の彼女が残忍に殺害されたのに、のんびりと学校に通っている」、「二股だったのに被害者がしがみついたので殺したのではないか」など、世論を追い込んでいきます。

しかし、ハン・ガンベクより有力な容疑者が浮上すると、「最初から学生たちは今日逮捕されたヤツを疑っていたという」、「目つきだけ見ても鳥肌が立ちました。こうなると思った」、「これは痴情ではなくサイコパスの仕業だと言ったではないか」と、まるで最初からハン・ガンベクの潔白を信じたように騒ぎました。

日本でも、インターネット上に暴露系や迷惑系と呼ばれる個人チャンネルが増えていますが、韓国でもSNSで開設された個人チャンネルが多く、そこから発信される情報、いわゆる”フェイクニュース”による問題が増えているようです。

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今期の韓国ドラマでは、LGBTQの息子を温かく包み込む母親、未婚を助けるシングルライフヘルパー、殺人事件でフェイクニュースを広める個人放送と、現在韓国で起きている社会問題が盛り込まれていました。

ドラマに社会像が反映されると、視聴者はフィクションのストーリーには没頭し、関連イシューについて一度は考え直すことになるようです。

しかしながら、韓国イシューが分かる一方で、視聴者は突きつけられた現実に疲労感を抱いてしまうこともあるようです。それほど生々しく描写しているということでしょうか。

星野沙

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