俳優ハン・ソヒが”キレイな俳優”というイメージを果敢に脱いだ。1つ荷を下ろしたことで自らの可能性を広げたハン・ソヒは自分の道に沿って力強く進んでいる。
2017年のドラマ『ひと夏の奇跡~waiting for you(邦題)』でデビューしたハン・ソヒ(27)は、2020年のドラマ『夫婦の世界』で一夜にしてシンデレラになった。
ドラマの中で彼女が演じたヨ・ダギョンは、チ・ソヌ(キム・ヒエ扮)の夫イ・テオ(パク・ヘジュン扮)を誘惑し内縁関係を持つ人物。ダンスとピラティスで鍛え上げた彼女のスリムなボディと華やかなビジュアルはイ・テオの不倫に説得力を与えるほどだった。
同名のウェブトゥーンを原作にした『わかっていても』でも、ハン・ソヒの美貌は輝いた。
ドラマの展開、結末、演出などでは、原作のファンとの間で好き嫌いが分かれたが、ヒロインのユ・ナビを演じ切ったハン・ソヒのビジュアルだけは「漫画から飛び出してきた」と好評を得た。毎回、期待を裏切らないビジュアルを披露したハン・ソヒだけに、次回作も期待を集めた。
そんなハン・ソヒが10月15日に公開されたNetflixオリジナルシリーズ『マイネーム』で、これまでのイメージとは全く別の姿で戻ってきた。
『マイネーム』は、目の前で父が殺されるのを目撃し、父を殺した犯人を捜すために麻薬組織に入ったジウ(ハン・ソヒ扮)が、スパイとして警察に潜入した後で向き合う真実と復讐を描いたアクションノアールだ。ジウは自分の未来と人間らしい生き方をあきらめ、ただ復讐のためだけに生きていく人物だ。
“限界”はまた別の可能性
ハン・ソヒは2021年1月の撮影中に過労で倒れながらも、ほとんどの高難度アクションシーンを直接こなすガッツを見せた。
キャラクターになりきるために10kg増量し、リップクリームを塗る以外は一切メイクもしなかった。
『マイネーム』を演出したキム・ジンミン監督は「ハン・ソヒは骨身を惜しまない俳優だ。自分で解決策を見つけ、何をすべきか悩む俳優だ」と彼女の情熱に称賛を惜しまなかった。
ハン・ソヒのイメチェンは成功だ。『マイネーム』は10月18日基準のNetflixテレビ番組部門ストリーミングで世界4位(フリックスパトロール基準)に上がって順調に進んでいる。10月20日、オンラインで会ったハン・ソヒはやや上気した様子だった。彼女は「作品が公開されてから緊張でドキドキしながら日々を過ごしている」と笑った。
●これまでとは全く違う姿ですね。イメージチェンジには勇気が必要だったと思いますが。
前向きで自分の意志で行動していく女性キャラクターを演じてみたかったです。周りの状況や人物に流されずに、信念と目的を最後まで守り抜く人物です。ノワールジャンルが好きなんですが、ちょうどこの作品がアクションと結合したノワールジャンルでもあるのでチャレンジすることになりました。これまで演技しながら、これほどの快楽を感じたことはありませんでした。
●『マイネーム』の反応がいいですね。人気チャートで高い順位を記録しましたよ。
アンダーカバー(身分を隠して潜入して秘密捜索する)を素材にしたドラマは多かったけど女性を主人公にした作品はほとんどなかったようです。視聴者たちもこの部分に注目してくれたんじゃないかと思います。
●体重を10kgも増量して話題になりましたね。
『夫婦の世界』を撮った時は体重が44~45kgでした。一生懸命アクション演技をしてたら食事の量が増えたんです。食べたいものを全部食べてたら54kgになりました。食べないと体がもたないんです。わざわざ10kg増やそうとしてたわけではありません(笑)。
●メイクもしなかったとか。
メイクをしないのは私の考えでした。リップクリームくらいは塗りましたが(笑)。それさえ塗らずに撮影したシーンも多かったです。なんだか、ジウならそうじゃなきゃいけないなと思いました。すっぴんの感じがしたらいいなと思いました。
●華やかなビジュアルを見慣れてますが、今度はずいぶん雰囲気が違いましたね。
体重もたくさん増やしたし、すっぴんなので、正直なところ心配しました。これまで私が見せてきた『ハン・ソヒ』の姿を好きでいてくれた方がいるだろうに、そのすべてを捨てて新しいビジュアルを見せなければならないという負担が無かったかと言えばウソです。でも、そうしなければなりませんでした。これまでの私のイメージから抜け出してこそ、視聴者に近づけると信じていました。
●イメージチェンジをしようと思った理由があるのですか?
演じながらいつも限界にぶつかり、自分に満足できませんでした。今回のドラマを通じて自分の限界を試してみたかったです。
●”限界”とはどういう意味ですか?
何かに行き詰まると簡単に諦めてしまう自分を責める傾向があります。でも、今回キム・ジンミン監督かおっしゃった「”限界”のもう一つの意味は”可能性”だよ」という言葉が胸に響きました。”限界”に達したということは、それを乗り越えたらもう一つレベルアップできるという意味ですから。そう考えたら”限界”はむしろ”エネルギーの源”になりうる。これから数えきれないほどたくさんの限界にぶつかるでしょうが、成長の糧にするつもりです。
●これまで『俳優ハン・ソヒ』と言えば『美しい俳優』という認識が強かったですよね。そんな認識に息苦しさを感じたのですか?
いえいえ、感謝の気持ちが大きいです。私の外面であれ、内面であれ、きれいとおっしゃってくれるのは何よりうれしいじゃないですか(笑)。ただ『きれいなだけの女優』にはなりたくないという思いでずっとやってきました。私はファンにも「ルックスは抜け殻」という話をたくさんします。美しさとかきれいさというのは外見でだけ成り立つものではないと思うからです。だから別の種類の『きれい』を見せるために様々なジャンルやキャラクターを演じたいんです。だからといって、わざと崩さなければならないということではありません。様々な新しい姿を共有したいという意味です。何かの役があって「これはハン・ソヒじゃなきゃ」と言われるような代替不可能な俳優と思われたいです。
今はハン・ソヒの道を歩くとき
●では新たに挑戦したいジャンルは何ですか?
今回アクションをやってみましたが、やったことがないことをやるのは確かに難しいです(笑)。私も誰かを好きになったことはありますから、メロ演技をする時は感情の糸口を見つけることはできるのですが、、さすがにアクションは‥。誰かを殴ったことなんてなかったですからね(笑)。でもチャレンジしてみたいです。一番やりたいのは『ジャンル物』で、チャンスがあればバラエティーもいいですね(笑)。
●作品を選ぶ基準が気になりますね。
実は私が作品を選べるようになったのは最近なんですよ(笑)。ただ自分に与えられた作品に120%没入しようと努力しました。それで上手なことに更に集中することになったし、その分、また違う自分の姿を探そうとしたような気がします。
●『マイネーム』で発見したハン・ソヒさんの姿がありましたら。
私は恐怖心のせいで出遅れることが多いんです。恐怖は自分自身に確信がないから生じるんです。アクションジャンル、”ジウ”という役も負担になりました。でもそれを打ち破ったと思います。私にもできる、頑張ればいい、とりあえずやってみようと決めたら気持ちが変わりました。視聴者の反応の中で「ハン・ソヒじゃないみたい」「ハン・ソヒはこんな演技もできるんだな」という言葉がとてもうれしい。「よく戦ってよく殴る」という言葉もおもしろい(笑)。これからは気楽に様々なキャラクターにチャレンジできると思います。
●デビューして4年が経ちましたね。俳優として成長した部分を挙げると?
以前ほどは緊張しません。私にはとても大きい意味があります(笑)。それだけ撮影に集中できて、役柄にもよく溶け込めるからです。
●出演作を振り返っていかがですか?
出演作というには物足りないと思いますけど(笑)。だからもっと頑張ります。どうしたらもっと良い俳優になれるのか悩んだりします。与えられた作品に最善を尽くすだけです。真心は通じるって言うでしょう?(笑)
●ポスト チョン・ジヒョンという評価を聞くこともありますね
それは本当にあり得ない話です(笑)。私はまだ自分が誰なのかもわからないのに。誰かの道をたどるにはまず自我から形成されなければならないので、まず「ハン・ソヒの道」を歩いています。ある程度認められるようになって成果を収められるようになったら、誰の道に沿っていくか分かるのじゃないでしょうか(笑)。
●それだけ「人気俳優」だという意味でしょう。
人気俳優というよりも、やっと顔を知ってもらえたレベルだと思います。まだまだなので自分自身にもっと鞭を打つことになります。私のエネルギーは、自分を崖っぷちに追い込むところから出るんです。私は堂々と生きたい。良くも悪くも、毎瞬間、堂々と生きる人生です。出来なければ出来なかった、うまく行けばよくやった、と評価されます。これを受け入れる気持ちで俳優になりました。
●たくさん悩んできたんですね。最近の悩みがあるとしたら何ですか。
もっとうまくなりたい。もっといろんな姿を見せたいという悩みが大きいです。どうしたら「俳優ハン・ソヒ」と「人間ハン・ソヒ」を分けて生きることができるかについても。本質的な悩みですね(笑)。
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