- 現在放送中のドラマ『キング・ザ・ランド』が、王道のラブロマンスで人気を集めている。
- 今年のヒット作は、個性的なジャンル物よりも、気楽に安心して見られるストーリーが特徴的。
- 最近は、視聴者にエネルギーを使わせない、“省エネドラマ”が新しいトレンドになっているようだ。
最近の韓国ドラマ界で、“省エネ傾向”が高まっている。
現在放送中の人気ドラマ『キング・ザ・ランド(JTBC)』は、作り笑いを軽蔑する御曹司ク・ウォン(2PMのイ・ジュノ扮)と、“スマイルクイーン”のホテリエ、チョン・サラン(少女時代のユナ扮)という正反対の2人が繰り広げるロマンチックコメディー。
7月9日に放送された第8話のエンディングでは、主人公2人の甘いキスシーンが登場し、視聴率も12.3%(ニールセンコリア全国有料世帯基準)と、これまでの自己最高記録を更新した。
このドラマは、舞台となっている“キングホテル”の御曹司と女性従業員の恋愛という王道のラブロマンス。複雑な設定はなく、コメディー要素とトキメキ溢れる展開が視聴者の心を掴んでいる。
つまり最近は、視聴者が気負わずに楽な気分で見られる、“省エネ”ドラマが人気となっているのである。
この状況について、ある韓国メディアは「長きに渡るコロナ禍で社会の雰囲気が低迷し、視聴者のストレスが長期化したことの反作用」と分析する。
ドラマ制作関係者は「視聴者は、ドラマを気楽な気持ちで見たがり、複雑に絡まった内容や葛藤が続く“コグマ”展開を見ることにエネルギーを注ぎたがらない」と話す。
ここで出て来た「コグマ(고구마)」というのは、韓国語で“さつまいも”のこと。
韓国では、スカッと爽快な気分になった状況を「サイダー」と清涼感のある炭酸飲料に例えるが、その反対に、さつまいもが喉につっかえたように、スムーズに行かず息が詰まるような展開を「コグマ」と表現する。
現在好調の『キング・ザ・ランド』にも、今のところ「コグマ」要素は見られず、今後の展開がある程度予想できる、わかりやすいストーリーとなっている。
今年(2023年)のヒット作といえば、JTBC『医師チャ・ジョンスク』や、tvN(Netflix)『イルタ・スキャンダル』が記憶に新しい。
上半期も、政治や社会の不条理を告発するような重めの内容のドラマや、奇をてらった個性的なジャンル物よりも、安心して見られるドラマが人気を見せた。
『医師チャ・ジョンスク』は、専業主婦歴20年の主人公チャ・ジョンスク(オム・ジョンファ扮)が、1年目の研修医となり医師としてのキャリアを再スタートさせる物語。
劇中には、夫の不倫エピソードも出てくるが、ドロドロとした描写はない。ストーリーのメインは、ジョンスクが、久々の社会復帰に翻弄されながらも、仕事や患者、同僚との関わりを通して成長していく姿が描かれている。
『イルタ・スキャンダル』は、惣菜店の熱血女社長(チョン・ドヨン扮)と、韓国トップの数学スター講師(チョン・ギョンホ扮)が繰り広げるロマンスコメディー。
主演のチョン・ドヨンは、高校生の娘のために受験戦争に足を踏み入れた、ナム・ヘンソン役を熱演。ロマンスとミステリー要素をミックスさせたストーリーで視聴者を楽しませた。
上半期に人気を集めたテレビドラマは、ロマンスコメディーや家族ドラマとして全世代が楽しめ、視聴者に与える“疲労が少ない”という点が特徴的だった。
今年のJTBCドラマ『医師チャ・ジョンスク』『良くも、悪くも、だって母親』『キング・ザ・ランド』などに携わったコンテンツ企業SLLも、最近の記者懇談会で、面白くてわかりやすいストーリーを意識していることを強調した。
制作総括であるパク・ジュンソ氏は「以前は作品性を最も優先する傾向が強く、JTBCドラマは暗くて難しいストーリーだという反応も多かった。それがむしろ大衆性を縮小したのではないかと思う」とし、「現在は大衆的に楽しさを与えられる要素を重要に検討している。良い話をより簡単に、明るく伝えるドラマを披露するという思いで制作している」と話した。
現在、ドラマ制作業界では「最も安全な選択がロマンスとコメディー、家族ドラマ」と言われており、大衆の好みも、見ながら疲労を感じる作品ではなく、気楽に見られるストーリーを求める傾向が強くなっている。
Netflix(ネットフリックス)に代表されるOTTプラットフォームが、ジャンル物まで幅を開げている中、テレビプラットフォームでは、全世代を対象にした、わかりやすくて明るい話と素材を優先する雰囲気が広がっているようだ。
日常生活で何かとストレスを受けることが多い現代人。ドラマでも見て気分転換をしようと思っても、内容が重めのドラマを見るには、それなりのエネルギーが必要となる。
そんな時は、王道ドラマであれば安心! ドラマを見る時はエネルギー消費を抑えたいという視聴者の省エネ傾向が、今後ますます強まりそうだ。
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